第7話涙と怒りが止まらない

〈ジライヤ〉本部に到着した4人は司令室に入り、隊長に敬礼する。


「皆さん、無事に帰還してくれて良かったです」


優しく微笑みながら敬礼をする隊長は全員を席に座らせ、一転険しい表情でモニターに今までの情報を映す。


「怪獣達が次々とデッドストロングに寄生され、全国で暴れ回っています。他の部隊もなんとか撃退していますが、倒す度により強力な存在になっていることは明確です」


その話を聞いて英二と十気はバディの最後の言葉を思い出す。

イゲルド人が蘇ったことを。


「隊長、言葉を遮るようで失礼ですが。お話を聞いてくださってもよろしいでしょうか?」


手を上げる十気に隊長は「どうぞ」と左手を平手にし、表向きで彼女に向ける。


「ありがとうございます。デッドストロングは元々イゲルド人が開発、自身に寄生させることで誕生したものです。肉片が散らばったことで様々な物に寄生したでしょう。ですが本質であるイゲルド人の人格が失われたとは考えにくい、つまり悪魔の科学者は復活した。そう私は考えます」


その発言に英二も「俺も同意見です」とハキハキとした声で口にする。

それはアツ、桜も共に同じ考えだった。


「相手の目的はストロングマンの抹殺。もし怪獣達が暴れ回っている理由が我々を分散させるためだとしたら。他の部隊の援護に向かった場合、イゲルド人の思うつぼですね」


確かに怪獣を他の部隊も撃退できるようになってきた。


しかしそれは人造ストロングマンの開発や兵器開発が進んでいるからである。

例えを述べるならば過去に存在したエネルギー原、原子力。

それはメリットとデメリットがあり、悪い場面が出ると被害が尋常ではない。

元は人造ストロングマンだった7人も最初本部では危険物扱いされていた。


昔から社会に多大な影響を与えるストロングマン。

これからも人を守るため戦って行く。

そう7人は戦友と誓った。


するとサイレンが鳴り響き、怪獣の出現を知らせる。


「真獣と怪獣がBブロックの海辺に出現。真獣は巨大な戦艦を模しています。怪獣はイエロージャック、現在2体は交戦中です」


「あれは、前に丈君とブルージョーが倒した怨念の集合体。その強化版だとしたら怪獣の力では勝てないどころか取り込まれてしまうわ」


オペレーターの映した映像には火炎放射を放つイエロージャックだったが、バリアで防がれ逆に真獣のミサイル攻撃を受け倒れ込んだことが映っていた。


それを観た高美は驚きが隠せない。


「乱打隊員、霧神隊員、すぐに〈ガンマ4号〉で出撃してください。丈隊員とブルージョー隊員も共にお願いします」


『「「「分かりました!」」」』


司令室を出た3人は廊下を駆け飛行場に向かい機体に乗り込む。


「行くよブルージョー」


『あぁ、必ず倒してやろうぜ』


発進する丈だったが死んでいった戦闘部隊の兵士達のことが拭えず、表情を歪めた。


『大丈夫か? やっぱ調子が戻ってないんだろ。すぐに帰還した方がいいんじゃないか?』


「僕は大丈夫。それより真獣を倒さないと、このまま上陸させる訳にはいかないからね」


『ならいいんだが………』


不安気な彼は万が一の為に体調を常に確認できるようスキャンし始める。

そうしている間にBブロックの海辺に到着、戦艦を模し、怨念を纏った真獣、復讐真獣コバチ・改二がミサイルを乱射していた。


次々に発射されるミサイルは近所の街を破壊して行く。


「関係ない人達を巻き込みやがって。霧神さん援護は頼んだ」


「分かりました。過去の亡霊には負けません」


英二はストロングマンクロスに変身、それに合わせ十気も〈ガンマ4号〉から高出力の光線を発射する。

バリアが攻撃を阻むがあまりの破壊力に貫通、砲台を1台破壊した。


コバチ・改二は標的をクロスと攻撃を仕掛けた者に合わせ、追尾ミサイルを放つ。

だが瞬間移動でブルージョーがバリア内に侵入、ビームサーベルで両断しようとする。


「終わりだぁー!!!」


叫び声を上げ、勝利を確信したその時だった。


なんと漂う怨念が怪獣の姿に変化、極端に巨大な右手で青き機体の頭を掴み上げ、そのまま握り潰した。


「ぶ、ブルージョー!?」


メインカメラそしてAIが粉砕され、ノイズに画面が支配される。


「ウワーーーーー!!」


親友の突然の死に涙と怒りが止まらない。

ハッチを開き、敵の位置を確認しながら逆鱗のビームサーベルを振り下ろす。

怪獣の右腕を切り裂き、テレポートで英二の横に立つ。

その姿を見た彼は察したようにコバチ・改二に向けて腕を十字に切る。


「終わらせるぞ」


「うん」


丈はビームサーベルをバックパックに収納し、ビームライフルの銃口を真獣に向ける。

ギアをチェンジし、光線を放てるよう構える。

相手も対抗して砲台の方向を2人に向け、一斉攻撃を繰り出す。


「クロスフルバースト!」


「くらえぇーーーー!」


放たれる2人の光線はすべてのミサイルを爆裂させ、バリアと激突する。

ヒビが入っていく光の壁。

しかしコバチ・改二は次元の裂け目に戻って行き、逃走するのだった。


数週間後頭部を破壊されたブルージョーは改修され、白き機体〈ブルージョー・スワン〉として生まれ変わった。


自我を持たない親友の成れの果てに丈は最初戸惑った。

だが戦いに専念する内にブルージョーとの記憶を胸に秘め、〈ジライヤ〉の隊員として成すべきことをしていった。


「ブルージョー、僕はヒーローであり続ける。だから………見守っていてくれ」

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