第3話死神はすぐそばに

「ストロングマン………今度こそお前達を………いざ尋常に………勝負………」


興奮で息を切らした状態の寄生アーマーガイⅡはエワイズに向けて両手に持つ2本の剣を大きく振り下ろし、斬撃を2発繰り出す。

だが装甲による防御で防がれ、逆に〈ワイテールアーマー〉のフックショットが射出される。

左手に持つ剣で攻撃を弾き、一気に距離を詰める。

右の刃の食らいつきにかかる野獣の如く豪快な

振りに右手の装甲で防御し、左拳で相手の顔を思いっ切し殴った。


後ずさりする寄生アーマーガイⅡに対し、装甲をパージすると3機の戦闘機に変形した。


エネルギーを両手に集め、指先を敵に向ける。


「ビーム666デビルワード!」


放たれる黒き光線。

隙を突いた攻撃だったが、次元の裂け目を開き光線を反射する。


「なに?」


思わぬ反撃に〈ゼットバリアブーツ〉でバリアを展開し防ぐと、その間に丈がビームサーベルを背中から引き抜く。

溢れ出すどす黒い血液を大量に浴びるも、怯まず真獣に向け光の刃を振り下ろす。

左手に持つ剣で防ごうとする寄生アーマーガイⅡだったが、高出力のビームに対しての耐久性がなく火花を散らしながら本体諸共両断された。


「必ず、お前達は主人によって滅ぼされる。冥界で待っているぞ。グハハ、グハハハ!!!」


高笑いを上げ爆散して行く彼の姿は、貴族のために仕える騎士の如き気高さと悪魔の様な不気味さを合わせていた。


「ブルージョー大丈夫!? 血液から寄生されてない!?」


『しばらく待ってくれ。今全身をスキャンしてる』


丈がそこまで焦る理由。

それはデッドストロングの肉片による寄生は怪獣だけではないことが証明されているからだ。

それは数日前、デバイスに寄生された20代男性が催眠術を掛けられ殺人事件を引き起こした。


この事からコンピュータも支配する能力を持っていることが判明し、社会に多大な影響を与えている。


『解析を完了したぞ。寄生された形跡はあるが逃走したみたいだ。しかし俺のデータをコピーしたらしい』


「それってつまりいずれ敵がブルージョーを元にしたロボットを開発するのかな? 僕のせいで………」


コンピュータが言葉を整理し、コンマの秒数でブルージョーは彼を励まそうとする。


『そんなことないさ。怪獣、そして真獣は俺達が倒す。その機体が出て来たら同じく倒せば良いさ』


「そ、そうだよね………」


自信を無くしたように肩を下ろすと、ブルージョーを操作し〈ジライヤ〉に帰宅するのだった。



一方その頃デッドストロングの肉片は段々とイゲルド人の姿を取り戻し、息を荒くしながら次元の裂け目を開いた。


中に侵入するとそこには白髪の女性の皮を被った真獣、ビフォーグⅡがお辞儀しながら待っていた。


「お待ちしておりました。ご主人様」


「ありがとう。お前の様な部下を持って私は幸せだ。今の現状を教えてくれ」


上機嫌な彼の言動の中で疲れを感じ取った彼女は心配の表情を浮かべる。


「大丈夫ですか? やはり今までのダメージが残っているのでは?」


「あぁ、ストロングマンとの戦いの古傷はまだ残っているんだろう。だがそれよりも今の現状だ。真獣達を集めろ。話を聞きたい」


「分かりました。すぐに集めますのでお待ちください」


ビフォーグⅡはポケットからデバイスを取り出し、主人の復活を真獣達に伝えた。


数分後全員次元の裂け目に集合し、1人ずつ話を聞き取りメモする。

内容を全部聞き終わると時刻は昼を過ぎていた。


そんなことは次元の住人には関係ないことで、とも言いきれず寄生していた際やられたダメージが疲労に繋がっている。


「ハァ、ハァ、ハァ」


再び息を荒くし、膝を着く主人に真獣達は不安気な呻き声を上げる。


「安心しろ………私は不滅インフィニットだからな………なーに………すぐに回復ヒールしてみせるさ………」


その場で立ち上がると自己再生を行い、体を治療するも咳が止まらなくなり、最終的に血反吐を吐いた。


「デッドストロングの再生能力でさえも私の体は癒せないか………ビフォーグⅡ………とりあえず宇宙船に向かうぞ………取っておきのデータがあるからなぁ………」


呼びつけられた彼女は「かしこまりました」とお辞儀をし、かつての本拠地である宇宙船へ次元の裂け目を開いた。



一方その頃〈ジライヤ〉では戦闘部隊の兵士の遺体を黒い車が運んで行った。


守ってくれた兵士達に丈は涙を流しながら敬礼し、後悔で心が潰れそうになった。


自分の責任で死んで行った仲間達。

その怨念が取り憑いている気がして体が急激にだるく感じる。


(僕のせいで人が殺された。僕が強くないから? 生身で戦えないから?)


精神的に追い詰められた彼は顔を歪ませ、司令室に戻る。

ブルージョーは相棒の表情と心拍数、そして脳から流れる信号から調子の悪さを感じ取った。


『戦闘部隊は必死に戦ってくれた。それを汲んで俺達は真獣を倒さなきゃいけないんじゃないのか?』


「ブルージョーの言ってることは正しいよ。だけどね。死んだ人はもう帰って来ない。拭い切れないんだよ。後悔はね」


人は屍の上に立っている。

幼い頃ニュースで聞いた怪獣との戦いに参加した兵士の語った言葉がある意味分かった気がするのだった。

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