第二話 ブレーカー落ちただけなのに...

「ファッ!?ふざけんな!!」


まさかパソコンとレンジを一緒に付けただけでブレーカーが落ちるとは思わなかったのでつい叫んでしまった。


思えばこのマンション、欠陥が多かった。

キッチンの棚の中に穴が空いていたり、

玄関のドアの覗き窓が斜めに付いていたり、

窓と網戸のサイズも合っていない。


しかし、ここで嘆いても仕方がない。

暗い中、パソコンの画面の明かりを頼りにブレーカーの場所を探した。


「あった、これがブレーカーか。結構高い位置にあるな、脚立を使おうか。」


私の身長は165cmしかないので手が届きそうになかった。なのでリビングの端に置いてある脚立を持ってくることにした。


リビングに向かうときにふとベランダの方向に目を向けた。そして、ある違和感に気づいた。


「ヒッ...」


何と、街中の電気が全て消えていたのだ。

向かいのマンションも遠くに見える川越駅の明かりも全て消えていた。


しかし、それ以上に奇妙なモノが目に入った私は戦慄した。


向かいのマンションのベランダだ。全てのベランダに筋肉質な男が一人ずつ立ってこちらを睨みつけている。そしてゴリラの胸を叩くような動作をしていたのだ。顔も変だ、ヴィ"エ"みたいな顔をしている。


今まで感じたことの無い恐怖を感じてとっさにカーテンを閉めた。


"ガタガタガタガタガタガタガタガタ"


「何だアレ聞いてねぇよ...やべぇ、もしかして裏世界か?裏世界に呼ばれてしまったのか?てか怪異なんて本当にあるのか?」

「いやきっと悪い夢だ、悪い夢を見ているんだ。私は明晰夢が得意だからな、明晰夢を使って無理矢理起きればいいんだ。」


もちろん現実だ、夢なんかじゃなかった。

それでも現状を受け入れたくない私は嫌な汗を全身から吹き出し、ガタガタ震えていた。


しばらく震えた後、私は冷静になって考えた。

「パソコンを使えば霊能者あたりに助けを求められるんじゃないか?」


震えるのをやめてパソコンの前に座った。

そしてツイッターを開いた。


"ツイートが読み込めません"

"ツイートが読み込めません"

"ツイートが読み込めません"


最悪だ、これでは助けは呼べない。

こんな場所で死ぬのは嫌だ。

あのゴリラみたいなマッチョに襲われて死ぬなんて嫌だ。しかし、この状況を打開する策が1mmも頭に浮かんでこない。

部屋から出なければ化け物に襲われたりはしないだろうが食料が尽きれば長くは生きられない。完全に人生を詰んでしまった。


「どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ、ちくしょう!パソコンとレンジ一緒に付けただけなのに。」


"コンコン"


その時だった、ベランダの窓をノックする音が聞こえた。幻聴じゃない、マジで聞こえた。


『すみません、佐◯急便です。玄関開けてもらえますか?』


ネットで注文した覚えは無いしそもそも佐◯急便はベランダから荷物を届けに来ない。間違いなくコチラの世界の住人だった。


"コンコン"


『開けてくださいよ』


"ゴンゴン"


『はよ開けんかゴラァ!』


"ドンドンドンドンドン!"


窓を叩く力が強くなっている、いずれ割って中に入って来るだろう。私は考えるより前に部屋の玄関に向かって走っていた。


"ガシャアアン!!!"


窓ガラスが割られると同時に私は部屋を出た。








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パソコンとレンジ一緒に付けるとブレーカー落ちる てんてん @shirobuta_akys

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