第7章 - 3 顛末(5)

 3 顛末(5)

 



 優衣の足が地面について、それでも歩き続けようとするのだが、右手にある優衣の背中までが下へ下へと下がっていった。

 アッと思った時には優衣の身体は地面に転がり、涼太は慌てて彼女の首から上を腕を使って必死に支えた。

 そうなっても彼は、再び優衣を持ち上げようとする。

 しかしもはやそんな力が残っておらず、いくらやっても途中で力尽きてしまうのだ。

 それでも彼は諦めない。

 何度もおんなじ動きを繰り返し、とうとう抱えることさえできなくなった。

 十センチと持ち上げられず、彼の腕はそのままカクンカクンと大きく震えて、地面にペタッと張り付いてしまう。

「くそっ!」

 そう呟いて、もはやここまでなのか!? と思った時だ。

 それはあまりに唐突で、尚且つなんとも穏やかに響いた。

「大丈夫かい?」

 慌てて声のする方へ顔を向けると、すぐ後ろに小さな老婆が立っている。

 きっと何事かと近付いてきて、涼太の後ろから覗き込んでいたのだろう。

「救急車を呼んじゃろか?」

 優衣を見つめてそう言ってから、やっと涼太の顔を見た。

しかし心が定まっている涼太にとって、それは迷惑以外の何物でもない。

 だから早速声にした。

 大丈夫だからと老婆に告げて、再びその手を優衣の背中に差し入れようとした時だ。

 再び老婆が声にしたのだ。

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