第4章 - 2 行方不明(2)

 2 行方不明(2)




 それでも夏川麻衣子は諦めず、必死になって説得したのだ。

 以前より、優衣は普通によく喋り、笑顔だって見せてくれる。

 それは涼太のお陰に違いないし、

 これからも、きっと彼女の支えになってくれると、

「だから、わたしの方から言い聞かせます。絶対に、無理をさせないようにしっかり約束させますから……」

 夏川麻衣子はそう告げて、

「もう一回だけ、わたしを信じてください、お願いします」

 深々頭を下げたのだった。

 そんな〝くだり〟を説明し、秀幸は再び涼太を見つめる。

「そんな夏川師長のお陰もあってだが、君には、本当に感謝しているんだ……ただ今回、ちょっとした行き違いが、あってね……」

 そこからの話を聞いてすぐ、冒頭の質問の意味を涼太はやっと知ることができた。

 彼は優衣の病室を出てから、ナースステーションへ寄っていた。

 そこで夏川への内線を知り、四階にある応接室まで出向いてしまう。

 そうして結果、そこで耳にした話にショックを受けて、優衣とは二度と会わないとまで思うのだ。

 ところがその時、おそらくは、涼太が非常階段を降り始めた頃なのか……優衣も偶然、その場に居合わせる。

「まさか扉の向こうで、優衣が、娘が聞いてるだなんて、思わないからね、こっちも、けっこうシビアな話をしていたんだ……」

 そうして、彼は言ったのだ。

「涼太くんにも、知っておいて貰った方が、いいだろうと思うから……」

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