第75話


「おい、一ノ瀬。この間の件、どうなってる?」


「おっす、リーダー。お疲れ様です」


「おい、待て一ノ瀬。質問に答えろ。この間の件はどうなっているんだと聞いているんだ。お前からの提案だろう?」


「へ?この間の件?」


「惚けるなよ。噂の中級探索者、安藤省吾のスカウトの話だ」


「ああっ!!そのことか!!完全に忘れてました!!」


「お前なぁ…」


「大丈夫です、リーダー。安藤省吾の実力はちゃんと部下が確かめてくれましたよ。安藤省吾は俺たちのクランに相応しくありません。スカウトするのは無しっすね」


「…む?聞いていた話と違うが?」


「ん?」


「部下からの報告を受けたが、真偽が怪しい。だから、お前が直接接触して安藤省吾の実力を見極める。三日前にお前自身が私に報告したことだろう」


「…そうでしたっけ?」


「おいおい、しっかりしてくれよ…」


「いやぁ…なんかすみません…」


「はぁ…まぁ、いい。ともかく安藤省吾には大した実力はない。それで間違いないんだな」


「はい。そういうことっす」


「そうか…ならいい。もう行っていいぞ」


「ういーっす。お疲れ様です」


バタン。


「はぁ…やれやれ。あいつの適当さには困ったものだ。今度厳しく指導する必要がありそうだな…」


「しかし、安藤省吾…お前はやはり噂に担ぎ上げられただけの探索者だったか…」


「久しぶりに我がクランにふさわしいようなしんじんが現れたと思ったが…」


「ふむ…しかし、何かしこりが残るな…この件をこのまま片付けてはいけない…私の直感がそう告げている…」


「本当に安藤省吾が有名無実の男なら、どうやって一気に中級探索者に成り上がったんだ…?」


「火のないところに煙は立たぬという…そんな大したことない男に、本当に、スタンピードを一人で殲滅、なんて噂がたつものなのだろうか…」


「ふむ…気になる…実に気になる、安藤省吾…」


「一度私が接触して直に判断した方が早いだろうか…」


「一ノ瀬が直接会って判断するなら間違いはないだろうと思っていたが…どうやらあいつは自分では接触しなかったようだし…」


「よし決めた。折を見て、安藤省吾には私が直々に会いに行くとしよう…」


「少しちょっかいをかけてみるのもいいかもな…追い詰められれば、スキルを隠している場合でもなくなるだろうし…」


「ふふふ…安藤省吾。お前の正体を見極められる日が楽しみだ…」



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