第76話
「うおっ!?なんだあれ…!?」
「有村さんに、転校生の四ツ井さん…!?」
「すげぇ…あれだけの美女が並ぶとは、壮観だなぁ…」
「てか、真ん中の男誰だよ…」
「あいつじゃないか…?四ツ井さんの親戚って噂されてる、安藤って男…」
「親戚?俺は彼氏って聞いたんだが…」
「しかし、四ツ井さんはともかく、なんで有村さんまで安藤と一緒にいるんだ…?」
放課後。
俺は周囲の生徒の注目をがっつり集めながら、校舎から校門までの道のりを歩いていた。
なぜ注目されているのか。
それは、俺の両脇を二人の美少女がガッチリと固めているからである。
「な、なぁ…すげー見られてるし、離れてくれないか?」
冷や汗を流しながら俺は、まるで逃すまいとするように俺の腕を掴んでいる二人の美少女…有村と四ツ井に言う。
「見られているからなんだというのかしら」
「うふふ…私は安藤さんとそのような噂を立てられても全然気にしませんよ。むしろ私にとって好都合というか」
「…っ。この女…さっさと離れなさい。この男には私が最初に目をつけていたのよ」
「あら…目をつけていてもモノにできていなければ意味ありませんから。あなたと安藤さんは別に付き合っているわけではないのでしょう?」
「…っ」
「ふん」
俺の申し出を拒絶した二人は、俺を挟んで今日何回目になるかわからない喧嘩を始める。
「はぁ…」
真ん中で挟まれて、俺はため息をつくしかない。
今の俺の現状は、見ようによっては両手にはなで、羨ましいというやつもいるかもしれない。
でも、俺自身は全然嬉しくない。
頼むから放っておいてほしい。
さっきから男たちからの視線が怖い。
真剣な殺気が込められている気がする。
「くそぉ…安藤のやついい思いしやがって…」
「なんであいつばっかり…」
「あんな地味なやつが、なんで有村さんと四ツ井さんと腕を組んでるんだ…っ!」
「ムカつく…」
そのうち俺、刺されたりしないだろうか…?
「うふふ…よかったですね安藤さん。周囲の男子から羨ましがられ、嫉妬されるなんて、男としては優越感に浸れて嬉しいのではないですか?」
四ツ井がニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
「いや…全然嬉しくない…」
「あらもう。照れてるんですか?」
「…照れてねーよ。頼むから離れてくれ」
「嫌です」
「…」
四ツ井が、ぎゅぅうと俺の腕をさらに強く掴んでくる。
絶対に逃さないという強い意志が感じられる。
前回の屋上の件から学びを得てのことだろうか。
腕に柔らかな感触が押し当てられて、ちょっと嬉しくないこともない。
だが、この後の面倒を考えるとやっぱり離れてほしい思いが勝る。
「あら、四ツ井さん。少し勘違いしているようね」
「はい?勘違い?」
俺が葛藤していると、有村が口を開く。
「彼らが嫉妬しているのは、別にあなたが安藤くんに付き纏っているからではないわ。学校一の美少女であるこの私が、安藤くんとこうして一緒にいるから羨み、嫉妬しているのよ。そこのところ、勘違いしないでもらいたいわね」
「ちょっ…」
また煽るようなことを…
「はぁ…まだそんなことを言っているのですか…いい加減、どちらが女性として魅力的か、気づいた方がいいですよ?」
「それはこっちのセリフだわ」
「…っ」
「はっ」
またしても喧嘩を始める二人。
もう俺にはどうしようもないので放置することにする。
「はぁ…まぁいいです。安藤さんは本当に魅力的なのは誰なのか、しっかり理解されてると思いますから」
「へぇ…じゃあ、聞いてみたらいいじゃない。ねぇ、安藤くん。そろそろ言ってやったらどう?本当に可愛いのはどっちかって。そろそろ鬱陶しくなってきたから、勘違い女に思い知らせてくれないかしら?」
「えっ」
と思ったら、なんかこちらに飛び火してきた。
「いや、別に俺はどっちも…」
「安藤さん。ここでどっちも可愛い、とか優劣つけない答えは男らしくないですよ。ほら、正直に答えてください、私の方が可愛いって」
「安藤くん。もちろん可愛いのは私でしょう?目が節穴でない限り、どちらの容姿が優れているか、自明の理だわ」
ああ、また始まってしまった。
どっちを選んでも地獄の選択。
前回は、なんとかその場から逃げられたか、今回はガッチリ両腕を掴まれているため、そうもいかない…
一体どうしたら…
「安藤さん!答えてください!!」
「安藤くん。さあ、選んで!!」
「…うおおおおお!!どうりゃいいんだこれえええええええ!!!」
どうしようもなくなった俺は、天に向かって叫び声をあげるのだった……
〜あとがき〜
新作の『トラックに轢かれて気づいたら白い世界のオーソドックスな異世界転生!〜成長チート、言語チート、魔法チートの三つのチートを駆使して剣と魔法の世界を生き抜きます〜』が連載中です。
よろしくお願いします。
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