第12話


順番待ちをしている間、俺は他の受験者たちのスキルの実演を観察することが出来た。


大抵の受験者のスキルが、実際の戦闘では役に立たないと思われるようなものだったが、中には強力なスキルを持つものもいた。


「では、次の方、どうぞ」


試験官に促されて1人の男が前に出た。


「受験番号380番の斎藤翔で間違いない?」


「はい。そうです」


「ふむ…では、早速スキルを実演してもらいましょうか。あなたのスキルは…?」


スキルを尋ねる試験官に斎藤と呼ばれた男が答えた。


「僕のスキルは念動力です。触れずにものを動かせたりします」


斎藤がそう言った途端に、試験官の握っていたペンがふわりと宙に浮き上がった。


そのまま試験官の元を離れて斎藤のところへ飛んでくる。


「おぉ…」


「すげぇ…」


他の受験生からどよめきの声が上がる。


念動力。


確かに強力なスキルの一つで間違いないだろう。


問題は、どの程度の力を出せるかという点だ。


まさかペンを浮かせる程度のことしかできなければ、戦闘ではほとんど役に立たない。


案の定、その点を試験官に突っ込まれる。


「どの程度のものを触れずに動かせるんだ?出来ればこの場で実演してほしい」


「そうですね…例えば…」


斎藤がニヤリと笑った。


徐に腕を上げて、試験官に向かって構える。


「…?」


試験官がキョトンと首を傾げる中、椅子に座っていたその体がふわりと宙に浮き上がった。


「うおおおおっ!?」


試験官が慌てふためく中、斎藤は試験官に向けている腕をぐるぐると回した。


するとその動きに合わせて宙に浮いている試験官もクルクルと回る。


「うおおおおおおっ!!!」


「すげええええええ!!!」


「なんだこのスキルっ!!!」


周囲の受験者たちは大興奮だ。


一方で宙に浮かされた試験官は溜まったものではない。


「もうわかったっ!!君のスキルの凄さは十分わかったからおろしてくれっ!!」


必死になってそう叫んでいる。


斎藤はゆっくりと腕を下ろしていった。


試験官もそれに合わせて降下していき、元通り椅子の上に収まった。


「どうですか?僕のスキルは?」


半ば挑発的に言った斎藤に対して、恥をかかされた試験官は少し悔しげに言った。


「ご、合格だ。筆記試験へと進め」



その後も実技試験は続行され、ついに俺の番がやってきた。


「次の方、前へ」


試験官に促されて、俺は前に出る。


「試験番号389番、安藤省吾で間違いないね?」


「はい」


「では早速君のスキルを見せてもらおうか」


「わかりました」


じっとこちらを観察してくる試験官に対して、俺はいった。


「俺のスキルは、炎を操ることが出来る、というものです」




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