第13話


「俺のスキルは、炎を操ることが出来る、というものです」


スキルを尋ねてきた試験官に、俺はでっちあげを口にした。


試験官が目を細める。


「ほお?炎を…実演して見せてくれるかね?」


「わかりました」


俺は前方に向かって手を翳し、火属性の初級魔法であるファイア・ボールを無詠唱で発動する。


ボッと音がして、手のひらサイズの火の玉が前方へ飛んでいった。


「おおっ!」


「これは…!」


受験者たちが若干沸き立つ。


「なるほど」


「悪くないな」


試験官たちの反応もまずまずだった。


よし。


やはり魔法であることはバレていないぞ。


俺は心の中でガッツポーズを取る。


「他には何か出来ないのか?」


「もちろん出来ます」


試験官がさらにを要求してきたので、俺は飛ばす火の玉を大きくしたり、巨大な炎を巻き起こしたり、炎の壁を構築したりと、色々実演してみせた。


その全てが、スキルではなく魔法だったのだが、もちろん気づかれることはなかった。


そして、試験官は俺の炎を操るスキル(偽)をお気に召したようだ。


「十分戦闘でも使えるスキルだろう…」


「これは合格で問題ないですね」


三人の試験官たちは互いに頷き合い、俺に判定を下す。


「合格だ。次の試験に進みたまえ」


「ありがとうございます!」


こうして俺は無事に実技試験を乗り越えたのだった。

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