第10話
「地震か!?」
「でかいぞ!?」
突然、校舎全体がガタガタと揺れ出した。
地震だとしたら相当でかい。
クラスメイトたちは悲鳴をあげて机の下に潜っている。
校舎が崩れた程度では死なない俺は、体幹を保ちつつ、窓の外を見た。
「なんだ…?あれ…」
眼下に見える校庭の様子がおかしい。
グラウンドの真ん中から、何か突起物のようなものが生えてきている。
地面から突き出た突起物は、どんどん天へと伸びていき、それに伴ってあたり一帯がぐらぐらと地震のように揺れた。
「…」
俺はその地面から生えてきた突起物を見て、驚愕してしまう。
この唐突に発生した異常事態に、ではない。
その突起物が、前の世界…剣と魔法のアルカディアでは馴染み深かった建造物だからだ。
間違いない。
あれは…
「ダンジョン…?冗談だろ…?」
俺はすっかり混乱していた。
夢じゃないよな?
なんで突然校庭に、モンスターの坩堝であるダンジョンが現れたんだ…?
それからのことを簡単に記しておこうと思う。
まず、突然校庭に現れた突起物は、ダンジョンの一部で間違いなかった。
地下にはアルカディアのそれと同じく、階層構造のモンスターの迷宮が存在し、興味本位で踏み入った幾人もの人間が犠牲となった。
ダンジョンは、俺たちの高校のグラウンドに現れたものだけじゃなかった。
全国津々浦々、いや、それどころか、全世界的に同時に出現した。
各国は混乱し、世界の終わりだと囁かれ、各地で暴動が起こったりした。
だが、ダンジョンについての情報がどんどん明らかになるにつれて次第に人々の混乱は沈静化していった。
それどころか、ダンジョンは石油や石炭に変わる、新たなエネルギー源と見做されるようになった。
ダンジョンには非常に凶暴なモンスターたちが闊歩していたが、彼らを倒すことによって得られる魔石や、ダンジョン鉱石が、地球のあらゆる資源と代替可能だったからだ。
各国政府は、ダンジョンが資源の宝庫とわかるや否やすぐに動き出し、ダンジョン開発のためのシステムを整えた。
それは奇しくも、アルカディアに存在したシステムと似たようなものだった。
すなわち、探索者を募り、またそれを統括する組織を作ったのである。
人間、たとえ世界が違っても考えることは同じということか。
アルカディアでは、ダンジョンを探索するものたちは冒険者と呼ばれたが、日本では探索者という呼び名が定着した。
そうして政府に認可されたものだけが、探索者としてダンジョンに立ち入ることを許されることとなった。
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