第9話


「何か用か?」


多くのクラスメイトは、俺の悪口を言ったり、無視したりはするが直接何かしてくるわけではない。


なのでこちらの心の持ち用でどうとでもなるのだが、しかし、この三人は違う。


こいつらは実際に俺に暴力を振るってきた

り、私物を隠したり、椅子に画鋲を仕込んだりと直接俺に危害を加えてくる。


タチの悪い連中だ。


こいつらだけは無視を決め込んではいおしまい、とはいかない。


「何か用か?とはあいさつだな」


「今日はいつも以上に態度がでけーな、乞食野郎」


「てめー、貧乏くせーから学校くんじゃねーよっつってんだよ」


そういうとノッポが俺の胸ぐらを掴んできた。


デブが、逃げられないように肩を固定する。

そしてリーダー格のチビが、ポキポキと指を鳴らしながら近づいてきた。


「うはっ、乞食のやつ、殴られるぜ」


「これは見ものだ」


「やっちゃえー」


他のクラスメイトたちは面白がって、くすくす笑いながら傍観している。


そんな中、チビが構えた拳を振りかぶる。


「身の程を弁えねー乞食野郎にはお仕置きが必要だな?」


そう言ってチビは俺の顔面へ容赦なくパンチを叩き込む。


ボキッ!!


何かが折れるような音がなった。


俺の顔面からではなく、殴った方のチビの拳からだ。


「いってえええええええええ!?!?」


チビが自分の拳を押さえて絶叫する。


そのままゴロゴロと床をのたうちまわった。


「お、おい…!どうしたんだよ!?」


「てめぇ、何しやがった!?」


デブとノッポが焦る。


うーん。


こっちとしては軽く撫でられたぐらいの感覚だったんだが…


可哀想に。


あの音は確実に骨が折れたな。


勇者と一般人だとここまで差があるか…


この分だと、俺が反撃したら、普通にこいつら死にそうだな。


流石に殺人者にはなりたくないから、こちらからは何もしないでおこう。


「くそおおお!!」


「死ねや乞食野郎っ!!」


リーダー格を倒されて怒り狂った2人が、それぞれ俺に向かって蹴りと拳を繰り出す。


そしてチビと同様の運命を辿った。


「うがあああああああ!?」


「硬てえええええええ!?」


鈍い音がなって、2人とも衝突箇所をおさえ、地面に蹲る。


こちらからは一切攻撃していないのだが、三人は勝手に自滅してしまった。


それをみたクラスメイトたちが、あちこちで驚きの声をあげる。


「お、おい…何が起きた…?」


「あいつ…あんなに思いっきり殴られたのに、全然効いてないぞ…?」


「殴ったほうがダメージ受けるとか…どんな体してんだよ…?」


「乞食ってあんなに強かったのか…?」


どよめきが起きて、クラスメイトが畏怖の視線を持って俺を見てくる。


俺がクラス中を見渡すと、目があった先から、さっと明後日の方向へ視線を逸らした。


…こいつらにプライドはないのか?


昨日まで散々馬鹿にしていた男が、強いと分かった途端におそれだし、視線も合わせなくなる。


はぁ。


なんだかこんな奴らに構っているのが馬鹿馬鹿しくなってきた。


無視して勉強でもするか。


そう思い、いまだに地面に這いつくばって呻き声をあげている三人組を放っておいて、鞄から教科書を取り出そうとしたまさにその時だ。


ゴゴゴゴゴゴ…


「うわっ!?」


「なんだっ!?」


「地震!?」


学校全体が、ぐらぐらと揺れ出した。



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