第7話
浮遊魔法を使った俺は、上空から街を睥睨する。
「浮遊魔法まで使えるのか…ひょっとして力は100%引き継がれているのか…?」
本当にそうだとしたら、俺はこの世界で文字通り、スーパーマンみたいな振る舞いができることになるが…
そんなことがあっていいのだろうか。
「とりあえず色々試してみよう」
俺は街の上空を高速でとび、そして海を目指した。
海上を移動し、陸からずいぶん離れた場所までやってきた。
ここなら魔法を使っても誰かに見られることはないだろう。
「とりあえず各属性の最上位魔法から試してみるか」
俺は前方に手を翳し、魔法を放つ。
「インフェルノ」
火属性の最強魔法、インフェルノ。
周囲一体を火炎地獄にかえる魔法であり、雑魚を一掃するのにはもってこいだ。
俺が魔法を発動すると、海上に炎の海が現出した。
炎はメラメラと高温度で燃え盛り、やがて波に飲まれて消えていった。
「威力は変わらずか…じゃあ、次は…ヘブンズ・サンダー」
お次は光属性の最強魔法ヘブンズ・サンダー。
ピシャ!!
ゴロゴロゴロ!!!
「おおお!」
俺が狙った地点に、天から雷が落ちた。
しゅううううと、水の蒸発する音がする。
やがてぷかぷかと感電した魚が浮かんできた。
「こっちも威力変わらず、か。どんどん試そう」
俺は各属性の最強魔法をどんどん撃っていく。
その結果、全ての魔法が向こうの世界と変わらずに使えることがわかった。
「まじか…まさか力が引き継がれるなんてな」
てっきりこちらの世界にきた時点で勇者としての力は剥奪されるものとばかり思っていたのだが…
こんな科学のみが発展した世界に、俺みたいな存在がいていいのだろうか…
とりあえず人前ではあんまり使わないようにしよう。
「ついでに古代魔法も試しておくか」
俺が転生した世界、アルカディアには通常魔法とは別に、一部の人間しか使えない古代魔法という強力な魔法があった。
古代魔法は、一つ使えるだけで一国を滅ぼせると言われるほどに危険な魔法だが、俺は修行の末に、現存する古代魔法を全て習得した。
それもいま、一通り試しておくことにする。
「クロック・ワールド」
俺は手始めに時を止める魔法を発動した。
瞬間世界が静止する。
「いち、に、さん…」
止まった時の中で、俺は秒数を数える。
きっかり五秒を数え終わった時に、世界が再び動き出した。
「止められる秒数は変わらず、か」
アルカディアにいた時と同じで、止められる時の秒数は五秒だ。
こちらも問題なく使用できるようだ。
「どんどん試そう」
俺は他の古代魔法も試していく。
転移。
憑依。
未来視。
超加速。
重力操作。
ありとあらゆる古代魔法を試したが、どれも問題なくアルカディアにいたときと同じレベルで運用できる。
「これで全部か…」
1時間も経った頃、ついに俺は全ての古代魔法がこの世界でも問題なく使えることを確認し終わった。
「俺にこんな力を残して…いいのか、アマテラス」
俺は天を仰ぐ。
科学の世界に、魔法を使える俺を蘇らせるなんて、アマテラスは何を考えているんだ?
こんな強力な力、おいそれとは使えない。
まさか世界征服を企むつもりもないし、いったい俺に勇者の力を残したアマテラスは何を考えているんだ?
俺は女神アマテラスの意思を測りかねて、洋上で首を傾げる。
だが、その翌日、俺はなぜ彼女が俺の力を引き継がせたのかをよく理解することになる。
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