第6話


どうやら俺はアマテラスの力によって、転生前、つまり隕石が頭に落ちて死ぬあの日まで戻されたようだった。


「今日は…バイトは休むよ」


「うん、その方がいいよ、お兄ちゃん」


結局俺はバイトにはいかないことにした。


10年以上ぶりに妹に再会できたんだ。


バイトどころじゃないし、外に出たらまた隕石が降ってくるかもしれないしな。


「すみません、今日は体調が優れなくて」


「いーよいーよ。ゆっくり休んで。省吾くんはいつも人一倍頑張ってくれているからね。

お大事に」


「本当にすみません」


バイト先の居酒屋に休みの連絡を入れると、店主は快く了承してくれた。


穏和な店主に感謝しつつ、俺は美久とリビングのボロボロのソファに座る。


懐かしいなぁ、この感じ。


帰ってきたって感じだ。


向こうでは魔族との戦いに明け暮れる日々だったからなぁ。


今日からはまた妹と暮らせるんだ。


ぐぅうううう…


「ん…?美久…?」


そんなことを考えていたら隣に座った美久がお腹を鳴らした。


「あはは…ごめんね、お兄ちゃん」


恥ずかしそうに頬を赤らめる美久。


そういや、俺たち、毎日の食事も満足に食べられないほど貧乏していたんだったな。


俺は改めて、美久を眺める。


「お兄ちゃん?」


首を傾げる美久はとても愛くるしく、思わず抱きしめたくなるような可愛さだ。


しかし、満足に食事をとっていないせいか、鎖骨が浮き出るほどに痩せていて、腕や足もとても細い。


見ていられなくなった俺は、美久に体力回復の魔法をかけた。


美久の体が光に包まれ、血色が良くなっていく。


「うわ…え、なんで…?急に体が元気に…」


美久が血色の良くなった自分の体を見て、驚いている。


よかったよかった。


俺の体力アップの魔法は満腹感も与えるものだからな。


これで今日は空腹の状態で寝ることはないだろう。


…ん?


待てよ。


当たり前のように魔法を発動したけど、ここってそういえば日本だよな…?


なんで俺、今魔法使えてるんだ?


「お兄ちゃんが、何かしたの…?」


不思議そうに自分の体を見ながら、美久が聞いてくる。


「い、いや…俺は何も…」


「そお…?」


首を傾げる美久に、俺はちょっと悪いなと思いながら、魔法を使った。


「スリープ」


「…すぅ」


くたっと美久が眠ってもたれかかってきた。


俺の胸の中で気持ち良さそうな寝顔を晒しながら、規則正しい寝息を立て始めた。


…また、使えた。


魔法が。


まさか、向こうの世界の力がそのまま受け継がれているのか…?


試しておく必要があるな。


「美久、ちょっと外に出るぞ」


俺はソファに美久を横たえて毛布を被せ、施錠をしてアパートを出た。


そしてそのまま浮遊魔法を使い、上空に浮き上がった。



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