第3話


剣と魔法の世界、アルカディア。


その最果てに位置する孤島で今、三日にわたる戦いに決着がついた。


「はぁ、はぁ、はぁ…俺の勝ちだ、魔王…」


剣を支えに肩で息をしながらそう言ったのは、人類代表の勇者として選ばれた俺、安藤省吾。


「くはは…完敗だ。おめでとう、人間の勇者よ」


そして地面に倒れ、満身創痍の状態でそう言ったのは、魔族を束ねる魔王。


人類を滅ぼす災厄とまで言われた化け物は今、あらゆる魔法を習得し、10年間強さを追い求め続けた俺によって倒された。


これでこの世界には長きにわたる安寧がもたらされることだろう。


「まさか私が人間如きに負けるとはな……だが、不思議と悪い気はしていない。お前と命を削り合い、勇敢に戦えたことを私は誇りに思うぞ…ではな。勇者。そろそろ限界だ」


そう言った魔王は目を閉じた。


そして完全に動かなくなった。


「はぁ…勝った…!」


荒廃した大地で、俺は膝をつき、天を仰いだ。


俺は勝った。


長き修行と旅を経て、ようやっと魔王を倒した。


あの日あの時、天界で女神に突きつけられた条件をようやく果たした。


これで俺は願いを叶えてもらえる。


そう。


俺のたった一つの願い。


日本に取り残されたたった1人の妹、美久を幸せにしてほしいという願いが。


「さあ、女神!!俺は約束を果たしたぞ!!今度はお前の番だっ!!」


天に向かってそう吠える。


すると、天から一筋の光が降り注いだ。


そして、頭上より見覚えのある翼の生えた美少女が降りてくる。


「魔王討伐、おめでとうござます。安藤さん。まさか本当にやってしまわれるとは」


「あんたは…!」


そう。


その美少女は、もう10年以上も前に天界で会い、俺をこの世界に送り込んだ女神、アマテラスだ。


「あなたの活躍は天界からずっと見守っていました。幾度となく死線を潜り抜け、よくぞ魔王をとうばつしました。約束通り、あなたの願いを叶えましょう。さあ、願いを言ってください」


「俺の願いはずっと変わらない。妹の…美久を幸せにすることだ」


そういうとアマテラスは微笑する。


「そういうと思っていました。すでにあなたの妹を幸せにする準備はできています。さあ、こちらへ」


そう言って手を差し伸べてきた。


俺はその手をとる。


するとふわりと俺の体が持ち上がった。


そのまま空へとどんどん浮上していく。


…と、そんな時だ。


「お待ちくださいっ!!ショーゴ様っ!!」


地上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

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