第39話


どうやって帰ったのかはあんまり覚えてない。




ゴミ袋を置いて、手を洗って、教官室に置いてあったバッグを取って、矢代が送ってくって言って並んで歩いたけどあんまり話はしなかった。



家まで送ってもらうのは悪いから、駅でバイバイした。



家に帰ってお風呂に入って、ご飯を食べて部屋へ行く。



まるでいつもと変わらないのに、なんだか変な気持ちだった。



ずっと心臓がドキドキと大きく脈打っている。



少し手が震えてるのが治らなかったし、矢代に間違って告白してしまった時と同じようにご飯の味がしなかった。



私は無意識にスマホを持ち上げて、そして矢代に電話をかけていた。




『すげータイミング。俺も電話しようと思った』



耳元で聞こえる矢代の声に、なんだかやっとホッとした。



「あのね、矢代。私もやり直したいんだけど」


『え、何を?』


「矢代が好きって、もっとちゃんと言いたい。あんな喧嘩腰じゃなくて。だから明日、きちんと告白しようと思う。だから矢代は心構えしといてよ」



わははと、電話の向こうで矢代が笑った。



『そんなん言われたら寝られねーよ、俺』


「ちょうどよかった。私も寝られないと思うから、ずっと電話してる?」


『ばーか』



その言い方が、いつもとちょっと違う気がする。




電話越しだから?




『はる。あれ、忘れたな』


「あれ?」


『うん。手、繋ぎたかったんだろ? そう言ってたじゃん』


「ああ、うん——」




私は急に恥ずかしくなって、そのままベッドに倒れた。



耳元では矢代の声。




矢代が笑ってる、とても楽しそうに。






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