第36話


矢代がため息を吐き出す音が辛かった。



男女の友情なんか消えてしまえと思った。



私の心を男の子に変える方法があるなら教えてほしい、とも。



私だって、ずっと矢代の近くにいられるなら一緒にいたいんだもん。




好きで好きになったんだじゃない。




「お前んちの近くで話した時に」



矢代がまたトングで壁を叩きながら言った。



「俺は計画なしだったっていうか、ただこのままだと話せなくなる気がして、俺の言い分を話たらはるがなんとか汲み取ってくれると思って言いに行った。そしたらやっぱりお前はそうしてくれただろ? 後で冷静になったら、お前の言ってることのがおかしいじゃん。なんだよ、フェアじゃないって」




ポイッとトングを捨てたかと思ったら、矢代が私に一歩近づいた。




「友達って、なんだっけって思った。お前としゃべんのが楽しい。男友達といる時とちょっと違うのは、はるが女だからだって、そう思ってた。でもはるのことずっと眺めてたいって思わないから、それはあいつとは違ってるからそーいうんではないって、そんな判断。それがそもそも間違いだよな」



ジリッと、一歩でも半歩でもなく、数センチまた私に近づいた矢代が怒ったみたいに顔を歪めた。





「はる。俺を好きって、どんな感じ?」


「——え?」




瞬きしたらまた涙が溢れて、でもそれ以上は視界は歪まなかった。






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