第25話
「延長戦、か」
昨日の一部始終を全部、包み隠さず話し終えると、アズがそう言って箸を置いた。
翌日の昼休み。
私は生理痛もほとんど気にならなくなっていて、アズとカノコと一緒にお弁当を食べていた。
戦友に隠しごとはできないし、矢代の矢代なりの優しさを話さないわけにはいかなかった。
ちゃんとその気持ちを受け止めたぞって、そういう矢代の気持ちを聞いてそのまま流すことはできない。
たとえアズが仁科くんを切り捨てることになっても、言わずにはいられなかった。
だって、それだけ大切な恋をしたってことだから。
ちゃんとそういうふうに、アズとカノコに矢代の気持ちを受け止めて欲しかった。
だけど現実は甘味ばかりではないらしい。
アズはそんな矢代の心の根底にある想いよりも、はじまったばかりの恋に神経のほとんどを注いでいた。
それでもそうやって呟いたアズの言葉に、私は違和感を覚える。
「違う。延長戦じゃなくて、一時停止だって」
「ねえ、ばかでしょ?」
アズが引きつった顔で言う。
「止まれるわけないでしょ? 私たち、心臓止まったら死ぬんだよ?」
もっともな意見だ。
「だから、それは一時停止じゃなくて、延長戦。だいたい晴海、止まれてるの? 顔に昨日より矢代が好きって書いてあるじゃん」
「えっ!」
思わず額に手をやった。
2人が目の色を変えて、その額の意味って何と食いついて来たのは、言うまでもない。
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