第24話
しばらく見つめ合って、それがなんだかファンタジーな感じだった。
私の感覚では、わたあめみたいなふわふわな何かが目の前に筋を作ったけど、それは決して塊にはならなくて、ばらけて溶けていく。
それでよかった。
私は矢代が満足そうに笑ったから、男友達と一緒にいる時とも違う、なんとも言いがたい優しい笑顔を見せたから、一度簡単に深呼吸してそれで笑い返した。
(私は他の女の子とはちょっと違うってことだよね?)
心の中でそう問いかけて、なんの反応もしない矢代に微笑む。
そりゃそうだ。
私の心の中が矢代にそんな簡単に知られるようならもっと波風立っていて、こんなふうに並んで公園のベンチになんて座ってなんかいられない。
だからって恋する女子をなめんなよ、矢代。
「でも。一時停止だからね。戻れないし、取り消しもできない。私は矢代が好きだし、矢代も私が矢代を好きだって知ってる。ね?」
私がそう言うと、矢代は何か言いたげに口を動かし、また額を引っ掻いて頷いた。
念押しに、私は矢代の顔に自分の顔を近づけて覗き込んだ。
「わかった?」
責めてるつもりだった。
なのに、矢代は私の肩を右手で押しながら、「わかったって」と真っ赤な顔を背けた。
完敗だった。
恋するのは私ばかり。
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