第9話


こんなにも朝が恐ろしかった日はない。



喉が炙られるような痛みに襲われたって、今までは所詮は他人事だった。



それが自分の身に降りかかり、ただ力いっぱいに投げつけただけの告白は受け取ってもらえたのか、それともサッと避けられたのかすらわからない。



夜が長くて、寝返りばっかりでほとんど眠れなかったのに、おかしなほど眠くもならなかった。


拒否されたわけでもないから涙も出ないなんて、何もかもが宙ぶらりん。



それでもやっぱり爽やかに朝はやって来て、そして、私はいつもの席に登校しなければいけない。



そのいつもの見慣れた背中は、全力で私を拒否しているように見えたし、いつも通りに「はる」と私を呼んで、もしくは「お前さ」って振り返りそうにも見えたからまた胸焼けがした。



ちょっと考えすぎてお腹が痛い。



「おーい、昨日の日直!」

                   


やって来てすぐに、肩に日誌をトントンやった担任が言った。



「今日もう一回やり直しなー。ちゃんと日誌書け。そんで窓が開いてたぞ。この雑な日誌見てピンと来なかったら、俺が怒られちゃうだろ。だから罰としてやり直し!」




え、地獄!




私は震えて、そしてもう一度、見慣れた背中へ目をやった。



もう私を振り返らない背中——のはずだったのに、矢代は私を振り返っていつものように声を出した。




「ばーか、お前のせいだからな!」


「……」



私がどんな間抜けな顔だったのかは、考えたくない。


でも私は言い返すことができなくて、ただ、また視線が合ってしまったことに驚いた。



まるでいちごジャムをひと瓶飲み込んだみたいに胃がムカムカする。




私は透明になるどころか、そのそもそもの告白すら、なかったことにされてしまったんだろうか。






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