第8話


その気持ちを隠すつもりはない。



今となれば、それまで矢代に伝わっていなかったことが摩訶不思議。



日誌を押し付けられた矢代が私を見上げる。



私は矢代に最上級に冷たい目を向けた。



私を見上げる矢代の目が、私に負けず劣らず冷たい。




「私だって矢代が好きなんだから。アズの気持ちもカノコの気持ちも知ってる。できれば隣で手を握りたいってやっと告白したんでしょ? 私も同じだもん。それができないなら、私を同じに切り捨ててよ。もういやだ。透明になりたくないから静かにずっと好きなんて無理。バカじゃないの、なんなの下心丸見えの1年とマックって——吐くほどポテト食べて後悔するくらい大きなニキビができればいいのに!」



見る見る表情を崩していく矢代に、そうやって思いつくまま投げつけた言葉が思い出せないほど私は動揺していて、それでもそれを無視してそのまま背中を向けて、ただまっすぐに家に帰って、それこそ吐けそうなほどに後悔した。



ずっと好きだった人への告白が半分脅すような言葉で、しかも他の女の子を陥れるような呪いの文面も含んでいるなんて、倒れそうなほど辛かった。



吐けそう、倒れそう、でも実際には私はちゃんと歩いてそして夕飯まで残さず食べている。



何これ。



こんなその場しのぎだらけの自分が情けない。



あんなに口から出せなかった言葉をほとんど勢いで伝えてしまったし、取り消しようがない。



なんだかイライラして、そのイライラついでに告げた気持ち。



どこか人気のないところへ呼び出して、好きですと告げるのとはわけが違う。



ごめん、とグループラインでアズとカノコに報告すると、私を責め立てるようなメッセージがガンガン届いて逆にホッとした。



あんたってそういうとこあるよね、と辛辣な言葉の羅列に安心するなんてどうかしてる。




弱った私に鋭利な言葉を突きつけた2人は、アズみたいにまた次の恋を見つけたい——そう思って純真無垢に返したメッセージには既読を付けただった。






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