第7話
これまでに最高のブサイク顔だってことは自分でもよくわかってる。
でも簡単に引き下がれなかった。
カノコが傷ついたそのすぐそばで、どうしてそんな話したこともない後輩の恋に寄り添わなくちゃいけないのか。
バカみたい。
私の持っていない勇気を振り絞ったカノコとアズに、私はどうやったって敵わない。
敬意は表せても、同じように素直に後には続けない。
跳躍するために足もかけられない。
たとえ崖っぷちにいても、身動き取れないポンコツだもん。
「行かない」
ぶっきらぼうに答えた私に、矢代はあからさまに機嫌を損ねた。
その不機嫌に歪んだ矢代の顔が、ポンコツな私の何かに触れた。
触れたのかかすったのか、それでも私の何かが振り切れた。
「お前な——」
「なんでカノコを振ったの」
思わず勢いで出た言葉。
だけど、勢いだけど、出ちゃったもんは引っ込められなかった。
バカだって冷静な自分が自分を地団駄踏んで罵ったけど、もう後の祭り。
「は?」
矢代の顔色が変わって、それでも私は食い下がった。
「なんでカノコを無視すんの?」
「……」
「傷つくよ、どっちにしろ。矢代がそうやってケジメつけてるのはわかるけど、でもやっぱり辛いんだよ。簡単に切り替えられないの、わかるでしょ?」
それは完全な八つ当たりだ。
どうしようもないことをどうにかしようとして、でもどうにもならないことに息が止まりそう。
私はデタラメに日誌を書き殴って、ガバンを肩に引っ提げて立ち上がった。
力任せに矢代に日誌を押しつけた。
「もういい。帰る。全部どうでもいい」
「はる!」
イライラを隠さないで、矢代が私を呼ぶ。
岡山桃香のデカ乳と、矢代の身の丈に合わないモテぶりに背中が粟立った。
泣けと言われれば泣けそう。
それでも私は、矢代を睨んで奥歯を噛み締める。
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