第4話
「アズがね、ラインしてんだって」
「——え?」
わけがわからないまま、首を傾げる。
「ほら、前に言ってたじゃん。国際科の仁科くん」
「えっ、ラインしてんの?」
驚いた。
ちょっといいなと思ってて、と聞いたのはつい先週のことだ。
どういうツテを使ったのか知らないけれど、もう連絡できる状態になっているということに驚きを隠せなかった。
「アズはすごいなぁと思って」
肩が上下するほど深くため息を吐いて、カノコが言った。
「もうイチかバチかで当たって砕け散ったけど、あんなに泣いても何事もなかったかのようなむくみのない平常運転の自分の顔なのが不幸中の幸い」
私は何も言えず、口をパクパクするだけだ。
「あんたが砕けると1番辛いけどね。だって、こんな近くで透明にされたら、立ち直れるかわかんないもん」
矢代の席を眺めて、カノコが呟くように付け足した。
「っていうか、砕ける前提でしか話できないあたしたちって、つら……晴海は矢代と仲良いけど、それでもあいつを落とせる気しないもん。これ利害なしで言うけど」
「そういうことはしまっといてよ、胸に! 私がどんどん何もできなくなるじゃん」
必死に言うと、カノコはカラカラに乾いた声で笑った。
「そういうことで、あたしは当分ここには来れませーん。潔くスパッと消える。そんで今日、帰りカラオケ付き合ってよ。アズには連絡してあるから」
潔く、という言葉通り、さっぱりとした顔でカノコが立ち上がった。
取り残された私は、小学校の時に体験した田植えをしているみたいだった。
足が取られて身動きが取れない。
ああ、と叫んで机に突っ伏したら、距離感が掴めてなくて頬骨のあたりを強打した。
近くにいた貫地谷くんが大丈夫かって心配してくれたけど、私とカノコの会話は隠せても、涙目になったのは隠すことができなかった。
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