第2話

ただでさえ、愛想はない。


男同士で騒ぐ時は楽しそうに顔を崩すくせに、それを邪魔されるととたんに不機嫌になる。



でも、仲良くなるととても楽しい。


会話のテンポはいいし、悪口に聞こえそうなこともそうならないような言葉を選ぶから、同じような話でも笑うことが増える。



思い返せばただそれだけで、好きになってしまった。



左肩を上げて歩く姿とか、少し俯いた時の斜めに首を傾げる仕草とか、妙にキレイな指先とか、そういうのがオプションで付いてきて胸がギュッとなった。



「ね、矢代のこと、好きでしょ?」



ニヤリとしてそう聞いたアズは、誰よりも潔く矢代に当たって砕けた女の子だった。


どうやってその気持ちを伝えたのかは知らない。


でも、翌日にボロボロになったアズを知っている。




「目も合わせてくれない」



アズはそう言って涙を見せた。


私もカノコも、それを聞いただけで吐きそうだった。



「でも、それは矢代が優しいからだと思う。私がいつまでも引きずらないように、そうやってわざと冷たくするの」



その時の私は半信半疑だった。



そんな気遣いが矢代にできるのかって、疑うことが考える間もなく脳みその中に浮かんだ。



それでもアズは矢代を庇うから、私とカノコはため息を飲み込むしかなかったんだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る