オーバータイム

あん彩句

第1話


それが優しさなんだとしたら、置き去りにされた気持ちはいったいどうなるんだろう。



だってまるで行き場がないじゃないの。



1人で部屋にこもってしくしく泣くとか、そんなふうにしたところでそれはなんとかできるんだろうか。



そんな自分を想像してしまうと前には進めない。



——なんて、いくらなんでも口が裂けても言えなかった。



少なくとも砕けて散った2人は、気持ちが置き去りにされたなんて思ってもいなかったみたいだけれど。


私にはどうしても、今までをまっさらになかったことにされたようにしか思えなかった。



それを目の当たりにして、恐怖心を持たない子なんているはずがない。



少なくとも私は半年間、石のようにぴくりとも動けなかった。



まるで全てを失うような気持ちで、そして息もできなくなるくらいの勇気を振り絞らなければいけないなんて、臆病者の私にできるわけがない。



だけど、状況は常に変わる。



後輩という生き物が学校へなだれ込んできて、ただちょっと周りにいる男の子たちよりも大人びているというだけで、憧れて騒ぐ女の子たちに焦ってしまった。



そして、それがその痺れるような光景を見たあとだったから、いろんな感情に飲まれてその渦に飲まれてしまったんだと思う。




ただ、それだけ。



それだけで、私はやってしまったんだ。





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