夏のSS 恋愛編

桃山ほんま

夏のSS 恋愛編「R<L×L」

― Lotusさんが入室しました ―

― LilyBatさんが入室しました ―


LilyBat;こんばんわ~

Lotus;どうも。珍しいね、この時間に来るって。

LilyBat;へへ、早く終わらせて来たの。早く話したくてさ

Lotus;嬉しいけど、あんまり無茶はしないでね。前みたいに倒れたら、悲しい。

LilyBat;心配しないでよ 言われた通りに朝とか健康を意識した物に変えたよ 

 それに仕事の方も、周りの子たちが気を遣って結構変わってくれるようになった

Lotus;良かったじゃん

LilyBat;…ね、ちょっとムッとした?

Lotus;してない

LilyBat;してるよ だって、「。」付けなかった それムッとした時の癖でしょ   

 ね、なんで? なんで?

Lotus;だから、してないって。もう、いいでしょ。

LilyBat;当ててあげる 私が他の子と仲良くしてるの想像して、ムッとしちゃった

 んでしょ かわいい~

Lotus;違うって。止めてよ、もう……。

LilyBat;ふふ、あなたって、からかうと反応が可愛いんだもの 誰だってそうしち

 ゃう

Lotus;そんな事、言われた事ない。

LilyBat;じゃ、私だけがあなたの可愛い所を知ってるのね とっても嬉しい!

Lotus;もう。あ、そうだ。この前言ってた入浴剤、届いてたよ。

LilyBat;あ、そうなの? どうだった?

Lotus;美肌効果とかはわかんないけど、いい匂いで、気持ちいいよ。送ってくれて

 ありがとう。

LilyBat;ふ~ん

Lotus;何?

LilyBat;それだけ?

Lotus;それだけって? え、何か言い忘れてたっけ。

LilyBat;あたし、Lotusさんから貰った物使うと、『あ、今同じの使ってる』って思

 うの なんだか、そういうのがすっごく嬉しいの こういう繋がりもあるんだって

LilyBat;そういうの、ない?

Lotus;……あるよ。これが、LilyBatの匂いかぁって思う。

LilyBat;あたし、そんな変態っぽい事は思わないけどな

Lotus;ちょっと!

LilyBat;ふふふ、ウソウソ あたしも思うよ Lotusさんの匂いに包まれてると、ま

 るで抱きしめられてるみたい

Lotus;……うん。私も、同じ。

LilyBat;不思議だよね こういうチャットでしか会えない関係なのにさ あたし、

 Lotusさんの事すっごく好きなんだ こんなに好きなの初めて

Lotus;私も。愛してる。

Lotus;あー、すっごい恥ずかしい! こういうの、キャラじゃないのホントに。

LilyBat;チャットだから素直になれる、でしょ? そういう所も可愛い

LilyBat;このやり取り、何度目 もう笑えてきちゃう

Lotus;もう覚えてないぐらい。毎回言ってるんじゃない?

LilyBat;かもね 

LilyBat;けどさ、ホントの所さ 実はLotusさんって幽霊なんじゃないかって思って

 たの 

 私とだけ繋がってくれる、私だけの愛しい幽霊 面白いでしょ

Lotus;勝手に殺さないでよ。それに、幽霊がネット使ってチャットする?

LilyBat;わかんないよ~ 昔は幽霊からの電話やノートに勝手に書き込まれる文字

 なんてのもあったみたいだよ このサイト見て!

Lotus;『なつかしオカルト伝承』? うわっ、最終更新が10年前。取り上げてる 

 記事も『宇宙からの幽霊通信』って、もう30年前の話だよ。古くてマニアなサイ

 ト。

LilyBat;でしょ? さっき言ったような事を考えてた時に偶然見つけたんだ で

 さ、ここの記事に面白いのがあって、『ネットゴースト』って奴

Lotus;ちょっと待って……

Lotus;実体のないネット上の思念体? 随分と荒唐無稽なSFね。

LilyBat;でもさ、あたしたちも似てると思わない? こうして、チャットだけで繋が

 って、気持ちを通じ合わせて 本当に画面の向こうに誰か居るのかもわからない 

 それって、ネットゴーストみたいじゃない!

Lotus;ゴーストじゃない。

Lotus;主張はわかる。私たち、お互いの顔も人種も、性別も声も知らないもの。

 確かに、相手がゴーストだったとしても気付かないだろうね。

Lotus;けど、私は死んでいたくないし、あなたにも死んでいてほしくない。まして

 や、ただの思念体だなんて、私のエゴが許さない。

Lotus;ネットの不確定性で幽霊になるぐらいなら、顔も人種も声も知らないからこ

 そ、あなたの顔も、あなたの声も あなたの身体も、あなたの心も私の理想だと夢

 見たい。

LilyBat;……もぅ Lotusさんってば、たまにイケメンになるんだからズルいよね

Lotus;さっきの仕返し。

LilyBat;はいはい、参りました もう、顔が熱くなっちゃう Lotusさんはあたしの

 真実とか気にならないの?

Lotus;それって、ホントの真実ってよりは、さっきみたいなぶっ飛んだ推理がって

 事?

LilyBat;そうそう! Lotusさんが書いてる作品とかでぶっ飛んだ話を書いたりして

 るじゃん ああいうの

Lotus;あれは読者の目を引く個性で、退屈させないための演出なんだけど、……ま

 あ、面白そうだし乗った。ちょっと考えさせて。

LilyBat;あ、さっき紹介したサイトっぽいのは無し! オカルトなし!

Lotus;嫌なクライアント。

Lotus;……なら、タイムトラベルってのはどう? このチャットは世界で唯一未来

 と繋がっている。

LilyBat;オカルトっぽい

Lotus;見解の相違、これはSFロマン。で、聞くの?

LilyBat;聞きましょう

Lotus;私とあなた、どっちかが未来人。それで、現代だと片方は子供かまだ生まれ

 てない。子供の頃に相手本人かデータ情報と出会い、大人になっても忘れられなか

 った。未来の技術でチャットなら過去と通信ができて、今こうして繋がっている。

Lotus;これなら、チャットでしか会えないのにも説明が付く。チャットが時間を越

 えるなら、データは時間を越えられるって事。なら、プレゼントは過去のネットデ 

 ータに割り込めば時代を越えた通販だって出来そう。どう? クライアントには満

 足頂けた?

LilyBat;饒舌ね、すごく 理屈で詰めるのも、それっぽい

Lotus;これでも本業だからね。好きなの、こういうの。

LilyBat;知ってる。



Lotus;ごめんなさい。退屈だった?

LilyBat;え、どうして?

Lotus;なんとなく、いつもより文章に勢いがないから。よく知らない人に、好きだ

 からってSFを押し付けるのはダメね。あなただったから、つい配慮が足りなかっ

 た。ごめん。

LilyBat;ううん! そうじゃない、そうじゃないの! ただ、

LilyBat;ただ、ね 哀しくなっただけ ネットゴーストもタイムトラベルも、どっ

 ちも触れ合えない寂しさがあるじゃない? 想いがあって、通じ合ってもいるの

 に、このチャットでしか分かち合えない関係 だから、それって悲恋なんだって思

 って

Lotus;うん、そうだね。プラトニックって言うには、物悲しいものがある。前提が

 それだと、結局は触れ合えず通じ合えない、一緒にはなれない二人の悲しい物語だ

 ね。

LilyBat;でしょ ね、Lotusさんはさ 

LilyBat;リアルの、あたしに会いたい?

Lotus;なんで?

LilyBat;あたしね、今から嫌な事言うかもしれない。

LilyBat;あたしは、Lotusさんとこのチャットだけで繋がるのが好き 通じ合ってる

 と想えるし、Lotusさんの気遣いと温もりを画面の文字から感じるのが好き あた

 しのリアルじゃなくて、ここの、LilyBatを好きでいてくれるLotusさんが好き

LilyBat;リアルで触れ合いたいとは、絶対に想わない 幻滅するのもされるのも、

 期待通りなのも納得されるのも、全部イヤ あたしはLotusさんの理想でありた

 い、あなたのLilyBatでいたい

LilyBat;このチャットだけの愛を、悲しい物語なんて言ってほしくない

Lotus;うん、私も同じだよ。チャットだけだから、素とはちょっと違う、気楽で羞

 恥心の薄い、自分だけど自分じゃない自分でいられる。

Lotus;LilyBatさんが好き、心から愛してる。

Lotus;リアルの私は偏屈で、神経質だから正直な想いも伝えられない。私も、リア

 ルで会いたくない。嫌な私を知られたくない。ここの、あなたを愛していたい。こ

 このLotusを好きでいてくれるあなただから、私は好きでいられる。

Lotus;これを悲恋物語だとさえ、世界は認めてくれないだろうけど。歪んでるとさ

 え言われるだろうけど。

Lotus;世界を敵に回しても、ここのLilyBatさえいてくれたら、私は救われる。

LilyBat;すごい、主人公っぽい

Lotus;私たち二人が、ここじゃ主人公なんだよ。この歪んでる恋愛劇のね。ふふ、

 なんだか、今日は筆が乗るな。

LilyBat;酔ってきたんじゃない? いろんなものに

Lotus;かもね。あなたのせいだ。

LilyBat;なら、そろそろお開きね 明日、早いでしょ?

Lotus;うん。新作の打ち合わせがあるね。そっちも会議でしょ。

LilyBat;昼からだよ。けど、お言葉に甘えようかな。おやすみなさい

Lotus;おやすみ




Lotus;……寝ないの?

LilyBat;そっちこそ 先に出てよ

Lotus;なんで。

LilyBat;あなたより先に出たくない

Lotus;私だってそう。

LilyBat;じゃ、合わせよ 10カウント

Lotus;いいよ。

Lotus;10

Lotus;9

Lotus;8

Lotus;7

Lotus;6

Lotus;5






― Lotusさん が退出しました ―


LilyBat;過去とだって想いが繋がる それはとっても素敵な事だと思うな 

 どんなあなたも大好きだよ、Lotusさん

 リアルよりも、私たちの世界が大事だもの


― LilyBatさん が退出しました ―

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