第19話

城内の揉め事を外の奴らに気付かせる訳にはいかない.

上を狙いに来る奴らに,

やすやす魔王の座を明け渡しはしない.

結界を強めに張っておかなければ.


「コウ!」


「お呼びでしょうか.」

コウが姿を見せる.


「私に話すべきことがあるはずだ.

申せ.

力づくで吐かせたい訳では無い.」

空気が振動する.

いつまで冷静にいられるだろうか.


「いつまで裏切り続けるつもりだ.

チビの記憶を覗いた.

言い逃れは出来ぬ.」


「蝙蝠族は,いくらでもいる.

私という確証は?

あの子は私を呼ばなかった.」


「お得意の魔封じであろう.

記憶を取り去る事は造作もない.

強い想いがある記憶は残っておった.

お前と居る所も…

仮面をつけておったが,あれはお前だ.

私がお前を間違う事は無い.


チビは吸血族なのか.

蝙蝠族と懇意にしていると聞くが…」


「あなたは!

あなた様は!何も分かっていない!」

コウが声を荒げる.


珍しいな.

いつも冷静なコウが.


「分からぬから申せと何度も言っておるのだろうが.」


今度は,だんまりか…

逆さに吊るすか…

奴は蝙蝠族だから,拷問でも何でもないな.





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