第7話

こいつは大丈夫だ.

あの迷いの森で生きておる.

と言いたい所なのだが…


「このような小さき者を地下牢に入れるとは…」

とタカが言うので,

「お前もズタ袋に入れて,乱暴に逆さにしたであろう.」

と返すと黙った.


「我が君の大切な者を,そのように扱ってしまい…」

と言うので,遮り,

「そこではない…」

と言ってやった.


はたと見ると,またもや

「ネコちゃん.」

と言うため,目は合わせぬことにした.

「ネコではない,魔王様だ.」


「分かった.もう良い.タカは行け.

自分で何とかするわ.」

「ははっ.」

とタカは言い,飛び去った.


1時間か…

「おい,お前.

何をして,いつも過ごすのだ?あの森で.

ネコちゃんと言うと,ぶちのめすぞ.」


少し考えて,

「何もしない.

歩けるときは歩き続けて,ただそれだけで1日が終わる.」

と答えた.

「それは,暇だな.」

と言うと,暇という状態が分からぬようだった.

「暇とは,何もすることがない時に使うんだ.」

と話すと,

「そしたら私は歩くことが出来たから,暇ではなかった.」

と小さき子は言った.


「お腹は?空いていないか.」

と聞くと,ズタ袋に入る前に,食事もトイレも済ませたらしかった.


ふむ.

「文字は読めるか?」

と聞くと,

「言葉は教わったけれど,文字は習えていない.」

と小さき子は言う.

書庫はあるが,難しい物ばかりであるし…

俺が読んで聞かせないといけないのか…

はぁ…


いや.言葉を教える者がいたのか.

あの迷いの森に.

何も生ける者がいない,あの森に.

謎だらけだな.



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