第7話 枝織響 1
ナルコと
最近の男子高校生のトレンドは神社なんだぜ。知ってた?
とは言ってみたものの、流行っているのはこの俺【
何故神社なのか。その問の答えは俺の趣味が答えになるだろう。
無類の都市伝説好きの俺は中学1年生の頃に様々な怪しげな場所を探索していた。
廃屋、廃病院、寺、神社、噂話やオカルト関連の情報をネットで調べてはよく通ったものだ。
その甲斐あって俺は
――――都市伝説と仲良くなった。
何を言っているのか理解し難いと思う。
しかし、事実俺は彼らと交流している。
彼ら曰く、都市伝説は“
そんな彼らと如何なるコミュニケーションを俺が取っているのか。
それは現在進行形で向かっている【
実は、都市伝説以外にも俺が天ヶ原神社に通う理由はあるのたがそこは、まぁ、花の男子高校生ということで察して欲しい。
「はぁ、はぁ……階段登るのキッツ」
「やぁやぁ、枝織少年。相変わらずこんな辺鄙な所まで通いつめなんて随分な物好きカパね」
息を切らし、階段を登った俺の目の前には、視界一面の緑が広がっていた。
「カッパァ!?急に出てくんなよ!その蛍光グリーンは人間の目には毒なの!!」
「失敬な!?わざわざ枝織少年を出迎えに来たというのに……なんだね、その態度は!そして、私はカッパではない。“カルパチーノ”だ。私はイタリアの貴族の血を引く高貴な存在。口に気をつけるカパ」
こいつは【カルパチーノ】。俺が仲良くなった露希の都市伝説のひとつだ。
イタリアの血を引いてるとか言ってるが絶対に嘘だ。
物事を信じやすい俺でもわかる。
あとその取ってつけたような語尾やめろ。
安易なキャラ付けか?
「それにしても、カルパチーノが出迎えなんて珍しいな。何かあった?」
「それについてなんだが……枝織少年、着いてきたまえカパ」
そう言って彼は表情に影を落としながら境内の中へ進んでいく。
俺はひとつの違和感を覚えた。
この貴族気取りのカッパは何故こんなにも神妙な面持ちをしているのか。
まさか――。
「あっ、枝織少年待てっ!!」
俺はカルパチーノの声も聞かずに走り出していた。
この時、俺の脳内では何かよからぬ事が起こったのではないかという不安の2文字が跋扈していた。
考えるより先に身体が動くタチの俺は既に幣殿まで来ていた。
勢いよく障子を開くと、
「「枝織響くん、高校入学おめでとーう!!」」
「へ?」
呆気に取られている俺を横目にカルパチーノは言った。
「やれやれ、君はもう少し落ち着いて人の話を聞いた方がいい」
「あ、あぁ。これって……?」
「我々、【
俺は相変わらず口を馬鹿みたいに開けてぽかーんとしている。
「枝織、こっち来いよー。お酒はダメだけどジュースはあるぞーあはははは」
大声で笑う、女性【
「亜姫さん、もう出来上がってるんスか?」
「まぁなぁ、ほれほれ本日の主役なんだから飲みなっせ。たーんと飲みなっせ」
「いや、それ絶対研究室にあったやつでしょ。また教授に怒られるよ?」
「知るかー!!私は飲むんだーい」
亜姫さんは露希第2研究所という、ここ露希でも夕飯有名な研究施設で学生の傍らアルバイトをしている。
アルバイトと言っても、ほぼ雑用みたいな扱いと本人は言っていた。
「都市伝説の研究進んでるんですか?」
「おいおい、今私は飲んでるんだよー。バイトの話はやめろよ。酒が不味くなるぅー!」
亜姫さんの専攻は民俗学。今は露希の都市伝説を調べているらしい。
都市伝説の研究なんて馬鹿な、と思うだろうが研究してる側としては至って真面目なのだから信じるしかない。
目の前に本物の都市伝説はいるが、彼女曰く「飲み友達が研究対象にされるのは嫌だ」とのこと。
俺は亜姫さんのそういうところが好きだ。
というか、“亜姫さんが好きなのだ”。これが、俺の露希神社に通うもうひとつの理由です。はい。
「おい、響!ウチのCDも買えよぉー!!」
「うおっ!酔っ払いがもう1人……ってかもう一体!」
「ウチを構えよぉー!男の夢と希望の象徴、アイドル様だぞー!!」
猫みたく膝にまとわりついてくるゴシックロリータな服に身を包んだ女は【
人みたいな見た目だが都市伝説だ。
彼女は三羽烏のリーダーを担い、その見た目を活かして地下アイドルをしている。芸名はトリックスター。売り上げは、まぁ、俺の口からは言えない。察してくれ。
「相変わらず、聖愛ちゃんはお酒が入ると暴れるコンねぇ。枝織少年?」
ちょいちょいと指でジェスチャーをする恰幅の良い狐の見た目をした都市伝説は【コクリータ】。彼は、メキシコの血が流れているらしい。
いやお前は日本産やろがい!というツッコミは飲み込んでくれ。
「聖愛ちゃんに手ェ出したら……殺すぞ?」
「ハイ……」
鳥喰聖愛を溺愛していることを除けば悪いヤツではないのだ。
信じくれ。
「あのさ、まだ言ってなかったから言うんだけど!」
俺の声に皆の視線が集中する。
「ありがとう。不思議な集まりだけど、こうやって種族?を超えて仲良くできるのって凄いからさ!改めて男子高校生になった枝織響をよろしく!!」
乾杯。俺が音頭を取ると同時に皆に揉みくちゃにされたのは言うまでもないだろう。
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