第8話 深淵の狭間
あれから
付き合ってから半年以上
角谷は日を増して
溺愛が強めになっていく
ただしキス以上進まないのは
彼の優しさなのだろうか?
角谷に二人きりで
話せるところに呼び出される
図書室の裏手にある資料室
角谷が先生から適当な理由をつけて部屋を借りた
「今度の週末…俺の家に来ないか?」
角谷の砕けた感がない真面目な顔
そして少し息が荒い
これは…何かある
これは…何かある
アリアリです!!!!!
美羽は即答できなかった…
「(はぁあ…とうとう初めてを捧げちゃうのかな…萌に相談したい凄いしたい)」
「二人きりで過ごしたい…
歯ブラシも買っておくから」
美羽を後ろから抱きしめ、肩に角谷は顔を寄せた
角谷の目がトロトロになっている
「(ぜぇえええったい、、×××な予感アリです!!)」
美羽の肩に角谷は顔を寄せた
「一生のお願い」
角谷は頬に顔を寄せて甘えている
「一生、、(さりげなくプロポーズ的な発言(mm)」
美羽が恥ずかしがって黙っている
「ごめん、、虐め過ぎたな…」
角谷は一瞬さみしげな顔をする
「…(拒み過ぎてしまって…前園先輩みたいに最終的に他の女性に走られてしまう結果になっても嫌です)」
美羽は恥ずかしさと過去の教訓との悩ましい気持ちと戦う
「美羽」
「ううん…」
「俺はお前が好きだ、だから二人きりになっても無理やり体を求めたいしない」
「うん…誠、ありがとう」
少しほっとした感じで美羽の表情も柔らかくなった
「あからさまな顔するなよっ、傷つくな」
角谷はむくれた顔をした
「…まだ、、初めてで…」
自ら発言して、急に目のやり場にこまってしまった
「大丈夫…俺も恥ずかしいけど同じだから一緒に学んでいこうな」
角谷は美羽の指を絡ませ、優しくキスをする
「俺は貪欲だから暴走して怖かったら拒んでもいいから合図して、、すぐ辞めるから」
彼は急に美羽の首筋にキスをする
「あっ、、」
美羽は身を少し捩れ角谷に寄りかかる
「可愛い声、俺の印ね!」
首筋のキスマークに角谷は満足そうに眺めた
+++++++++++++++++
2年前 ―
「二人きりで過ごしたい…」
付き合い始めて半年が過ぎようとしてた頃に
前島から学校帰りの夜デートに誘われ
前々から乗りたいと思っていたショッピングモール内の観覧車を
美羽の誕生に合わせ前島と行く
食事も兼ねて誘ってくれたため
空もすっかり薄暗くなりイルミネーションも点灯する
観覧車の前は長蛇の列だったが前島と居られるだけで
美羽は待ち時間も楽しく少し大人な雰囲気に酔っていた
前島のエスコートで
観覧車の中に入り込む
店員が車体の扉を閉める
ゆっくり上昇して、並んでいたさっきまで長い列が小さくなる
夕方の薄暗くなった車内は
半分上がったところで
前島は美羽の隣に座る
「今日の美羽可愛い」
美羽の髪の毛を後ろに流すと、
前島はキスをしてくる
美羽はまだキスになれなく
どこかぎこちない感じが伝わるのが怖かった
「前島先輩…ほかの人に見えちゃいます」
「暗くなってきてるから見えないよ」
前島の膝の上に美羽を座らせ体を抱き寄せる
腰と腰が密着する
抱っこする体制で
美羽の体を前島の方に向けるように誘導しキスをする
いつもとは違う長く激しいキス
前島の息が荒くなり腰に回していた手が、
スカートの中に入り太ももに触れてきた
美羽は怖くなり逃げ腰になる
しかし腰に回した手の強さが勝ってしまい逃げることができない
重なり続けている二人の唇と息だけが車内を熱くする
前島は美羽を何も言わないように顔の後ろのに回した手でロックされキスで塞ぎとめる
腰に回していた手が美羽の太ももを通り過ぎて、ショーツに触れる
美羽の腰あたりに異物があたり、
彼の腰が深い吐息に合わせて前後に擦られている
合わせて車体も揺れた
「(怖い…)」
キスより先に進んでしまうことで
どうなってしまうのか
怖くてパニックになる
ガタン。
観覧車の頂上を過ぎた後
金具のすれる音で
前島は驚いたように我に返る
「せ、先輩」
美羽の瞳から涙が零れた
小刻みに震えた手
男を全面にだした前島に抱かれながら
美羽は怯えた
「すまない…」
前島は美羽から体を離し、
それから二人は無言になり観覧車を降りる
あの一件から
前島は余所余所しくなってしまった
経験が浅いのがいけなかったのか?
私がしたことのせいで
すれ違ってしまったの?
もう前島先輩は去ってしまったが
結局また同じような誰かを好きになり
そして同じ壁に立ち止まる
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