第6話 美しい思い出は狂気の前触れ
早く出会って居たのなら…
彼女には違う人を好きになっていた
その孤独を埋めるために
他の代用で孤独を埋める
誰かを抱いていると
全てを手に入れた気分になった
想いが届かない孤独な気持ちを
忘れさせてくれた
騙すつもりは無かった
ただ孤独から逃れたかっただけ
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2年前
出会った名前も知らない少女
進学のことで親と口論になって外に飛び出す
父の激しい怒涛の声
泣きだす母
数日まともに寝ることも出来ず
毎日のように
気持ちをぶつけ合っていた
息を切らして走り続けた
急に立ち止まると眩暈がする
通りすがりの男性に肩がぶつかり
地面に膝をついてしまったときに指を軽く擦りむく
「大丈夫ですか?ケガしていますよ」
見覚えのある私立の中学生の制服を着ている少女が話しかける
彼女はポケットからハンカチを手の傷口に充てる
心配そうに話しかける彼女
優しい言葉をかけてくれる
それだけで今は少しだけ救われる
「ありがとう、、」
角谷は薄れた気力でお礼を言う
白いハンカチがほんのり赤く染まる
「ごめん、汚した」
「傷の方が心配だから、汚れた事は気にしなくていいです、このままお使いください」
バスのタイヤの音
停留所で長い列はバスの中に吸い込まれていく
「私、急いでいて…ごめんなさい」
その少女はそのまま急いでバスに乗り込んでいく
彼女に手がすり抜けるように離れていく
何か喉に痛みに似た違和感を感じる
数日後、、
クリーニングに出したハンカチを持って
彼女の居る学校に来てしまった
ハンカチを返したい
…もう一度お礼が言いたい
出来れば
あの優しい眼差しで
俺を見て優しい言葉をかけてほしい
1時間ほど校門の前で待ち伏せをしていた時、彼女らしき学生が出てきた
角谷はハンカチをポケットから出し、彼女の元に向かう
近くまで来て話しかけようとしたとき
彼女の視界の先には他の男性に映っていた
「美羽ちゃん、一緒に帰ろう」
「…うん、前園先輩の青陵高校を受験することにしました」
「受かるといいな」
彼女の視線の先に別の男性学生と嬉しそうに会話をしている
角谷は二人が仲良く歩いている姿を傍観していた
ハンカチを握りしめた手が震えていた
背筋が凍るような電撃が走る
彼女がほのかに頬を赤らめ、彼氏を見つめた潤んだ瞳に激しく動揺し嫉妬してしまった
本当の気持ちを伝えたいだけ…
目を閉じ深く祈る
1年後、角谷は青陵高校を受験する
両親の反対を押し切り、角谷は学校の近くで
一人暮らしをすることになった
クラスメイトとして過ごす日
日々繰り返す暮らしの中で、彼女を視界に捕らえている
情報も親しい女子生徒から美羽の彼氏が浮気している現場や情報も十分入手してきた
駅前の駅前から伸びるメインストリートにはおしゃれなお店が立ち並んだ一角にあるパティスリーで人気のカフェを兼ねているお店
セミロングのストレートの女性が窓際でコーヒーを飲んでいる
「美香子先輩」
角谷は向かい合わせの席に座る
「誠くん、神崎さんと別れたかな?
二人ともファシストだからね」
「ああ」
「そう、時は満ちたって感じね、、いい情報手に入ったんだけど聞く??前園先輩が彼女と明日別れるって内容」
悪びれもなく美香子は涼しく笑う
彼女は一つ年上の先輩で従妹同士でもあった
角谷のことは男性としてお気に入り
従妹で別に恋人がいるから深い関係までは望んでいたなかったため
都合がよかった
「いつも悪い…」
「身内だから、っていうのは表向き
誠くんのファンとして当然のことをしたまでですわ」
美香子は美しく微笑みかける
遠くで青い稲妻が光る
やがて、空から雨の粒が落ちてきた
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