第15話 僕らの恩返し



「行った?」


「行ったね!」


恩人が通り過ぎたことを確認し、僕たちは会話を始めた。


「本当に良い人だったね!」


「自分が寒くなっちゃうのにね!」


「これ暖かいよ〜!」


誰もが彼を褒めている。


「何かお礼をしたいね!」


僕が言うと、横からどんどん声が返ってきた。


「お礼!いいね!」


「何をあげたら、喜ぶかな?」


「やっぱりお米じゃない?あと魚とか!」


それぞれがお礼について考えているようだった。


「「「「「「全部あげちゃおうか!」」」」」」


全員の意見が一致した。


夜になり、人目が無くなってから僕らは動き出した。

荷物を担ぎ、歩き出す。

恩人の喜ぶ顔を見るためなら、険しい雪道だって頑張れる。

しばらく歩くと、恩人の家が見えた。


「もう寝てるかな?」


「起こさないように行こうね!」


「喜んでもらいたいね!」


近づくにつれ、ゆっくりと進み物音を立てないようにする。

家の前に着くと荷物を置き、また静かに家を離れた。


もう少しで家が見えなくなる、、、時に背後でガラッと音がした。

恩人が扉を開けたのだ。


「見られちゃったかな?」


「起こしちゃったね。」


「驚いたかな?」


話しながらまた険しい道を戻り、恩人と出会った場所でまた僕らは立ち続ける。


次の日、恩人が傘を一つ持ってやってきた。

自分の傘だと申し訳がないと言っていた。

恩人は僕らのお礼を本当に喜んでくれて、何度も何度も「ありがとうございます。」と言ってくれた。


「また来ますね。」


そう言って恩人が去っていく。

姿が見えなくなってから僕らは話し出す。


「喜んでくれたみたいだね!」


「やっぱり見られちゃってたね!」


「嬉しいね!」


傘よりも、恩人のその気持ちが僕らにとっては何よりも嬉しかった。



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