第8話 火傷の理由



今日旦那が大火傷をして帰ってきた。

話を聞くと、屋根に登って煙突に入ったら降りた先が鍋だったらしい。


「痛い〜、薬を塗ってくれ〜」

と一日中うるさい。

ベッドから起き上がれずに寝込んでいる。


「なんでそんなことしたの?誰の家に入ろうとしたの?」

と聞いても、話を逸らしてばかり。


「友達の家に悪ふざけで入ろうとした。」

「酔っ払っていた。」

なんて言い訳をいくつも言っていたけど、どれも嘘っぽい。


本当は浮気をしてきて、浮気相手にやられた?

喧嘩に負けてやられた?

色々考えた。


次の日旦那に

「あんた、聞いたわよ?まさか怪我の理由があんなことだったとはね〜」

とカマをかけてみた。


「え!!!誰かに見られてたのか!!?誰に聞いたんだ!!?」

目を大きくしながら慌てて飛び起きてきた。


「誰からとは言えないけど、バッチリ見られてたみたいよ?噂になるかもね〜」

わざと意地悪く言う。


「ああ、そんな、最悪だ、、、もう外を歩けない、、、」

ガックリ項垂れて、本当にショックを受けている様子の旦那だった。


こんなにショックな理由って何かしら?

どうせ大袈裟に言ってるんだわ。


「外を歩けないなんて大袈裟よ〜!そんなに気にすることないじゃない?」

と旦那の肩に手を置いて慰めようとした。


旦那私の手を振り払い、立ち上がり、大きな声で叫んだ。

「大袈裟!!??豚に負けたんだぞ?子豚に逃げられて、こんな火傷までさせらて、逃げて帰ってきたんだぞ!!??それを誰かに見られたなんて狼の恥だ!!!」


「は?子豚?あんた子豚に負けたわけ?」

想像していた何倍もとんでもない理由だった。

狼が子豚に逃げられて、怪我をさせられて、ノコノコ逃げ帰ってきた?

理解が追いつかない。


「え?お前誰かに聞いたんだよな?」

旦那が驚いてる。


「嘘よ!嘘!あんたが正直に言わないからカマかけたのよ!あんたも嘘ついたんだからお互い様よね?」

私が正直に言うと、旦那の顔色が見る見る赤くなっていった。


「嘘?お前嘘ついたのか!!!俺が言いたくないって言ってるのに、嘘までついて言わせたのか!!!」

ベッドの横の薬の瓶を投げて旦那が叫ぶ。

結婚して初めてこんなに怒っている姿を見た。

次に旦那は枕を手にした。

枕は旦那の手を離れ、宙を舞い、私の顔に飛んできた。


「何してくれてんのよ!!!!」

思いっきり叫んだが、顔面に枕を投げられた私の怒りは治らない。


「子豚に負けて怪我して帰ってきて、偉そうにしないでくれる?妻に暴力まで奮って最悪のダメ夫ね!!!」

旦那のそばへ行き、火傷している下半身におもいっきり枕を叩きつけてやった。


「い、痛いいいい!!!!!!」

飛び上がるほど痛かったらしく、ベッドが大きく揺れた。



この喧嘩が元で、私は旦那と離婚することを決意した。

今は違う狼と結婚し、子宝にも恵まれ、幸せに暮らしている。


元旦那は自分が大声で叫んだことで、火傷の理由が近所まで聞こえてしまっていたらしい。

自分の情けないエピソードが近所に知られたことがショックだったようで、まだ火傷が治らないうちに実家のある山へと帰っていたと噂で聞いた。


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