第3話 おかしな家



「あんまり遠くに行っちゃダメよ!」

お母さんからの言葉に

「はーい!」

と、とりあえず返事をしておいた。


お父さんとお母さん、弟と私は旅の途中で花畑に寄った。

花畑の横には大きな森があって、私の好奇心は森へと向いていた。


森の中では鳥の鳴き声や、木々が風に揺れる音だけが聞こえていた。

探検しながらしばらく歩いていると、甘い匂いがしてきた。

ビスケットを焼くような甘い匂い。


『こんな森の中でお菓子を作ってるお家があるのかな?』

気になった私は匂いの方へと進んで行き、家を見つけるとすぐに走って逃げた。


甘い匂いのする家は、家自体がお菓子で出来ていた。

砂糖で出来た窓からは、おばあさんが鍋を混ぜているのが見えた。

いつもだったら、近づいてお菓子を貰えるか聞いていたかもしれない。


見えたのがおばあさん だけ だったら。


私にはおばあさん以外にたくさんの子どもが見えてしまった。

おばあさんの背中や、屋根の上や、玄関のそばに。

たくさんの 生きてはいない子どもたち が私には見えた。

屋根の上にいた男の子は私と目が合うと、首を横に振って口を動かした。


逃げろ と言っているように見えた。


家族がいる花畑へ全速力で走った。

途中で一度転んでしまったが、すぐに立ち上がって絶対に振り返らなかった。

誰かが追って来ているような足音が遠くに聞こえた気がした。


「あー、いたいた!どこに行ってたんだ?遠くに行くなって言っただろう?」

森の中までお父さんが迎えに来てくれていた。

私はお父さんにすぐに飛びついた。

「どうした?何かあったか?」

と言われたが、何も答えることは出来なかった。

誰かに見られている気がしたから。

森から出るまでお父さんにしがみついて、下を向いて歩いてた。

鳥がどこから持って来たのか、パンのかけらを食べていた。


花畑に戻り、花畑から出発しても私は次の街まで怖くて後ろを振り返ることが出来なかった。


大人になった今でも家族にはこのことは話せていないし、私は森へ二度と入らなくなった。



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