第二話

 四日後。


 今はちょうど最後の教科が終わったところ。

 思った通り、結果は惨敗。


 まあ、次から頑張ればいいのだ。今回はなかったことにしよう。


 さて。終わったことは終わったこと。

 せっかくテストから開放されたのだから、どこか出掛けようか。


 今までだったら紅葉と買い物にでも行ってたんだけど、紅葉は白柏君とどっか行くって言ってたしなぁ。

 どうしようか。


「汐音!!!」


「うっわ、な、なに、驚かさないでよ…」


 急に汐音が駆けよって来て、大声で私の名前を呼んだ。


「体育館行こ!!!」


「え、白柏君とデートじゃなかったの?」


「それ取り消し!!!なんかね、朔くんと富谷くんたちがバスケすることになったらしいの!!!これから迎えに来てくれるっていうからほら!はやく!汐音も用意して!」


「え、それ私行っていいの?お邪魔じゃない?」


「汐音が邪魔なわけあるかぁ!っていうかむしろ来てほしいです!寂しいです!って言うわけでほら!さっさと用意する!」


「くれは………」


 そんな優しいこと言わないで…泣いちゃうよ私……


 ぐすぐすと涙目になりながらもてきぱきと手を動かす。



「「「きゃぁ!!」」」


 周りから黄色い歓声が聞こえた。


 きっと白柏君が紅葉のことを迎えに来たのだろう。

 きゃっきゃと騒ぐ女子の姿が目に入る。


「こんにちは、紅葉、いるかな?」


 予想通り、白柏君の声が教室に届く。


「ふ、深澤さん、呼ばれてるよ」


「あ、今行くからちょっと待ってね。ほら、汐音、行こ?」


 催促されて、私もついて行く。


 人混みが凄く、白柏君の姿さえ見えない程だ。

 なんとか掻き分けて進んでいく。


 ……………って、え?

 ……………なんで富谷君がここにいるの…?


「あっ、長谷川さん、お久しぶり」


「ひ、久しぶり」


 なに動揺してんだ自分!!

 気付かれちゃダメでしょうが!


「なんかごめんね、付き合わせちゃったみたいで」


「ううん!ちょうど暇だったから嬉しい」


「そっか、ならよかった」


「………ってこんなとこで話してないで行こっか。結構ギャラリーも集まってきちゃったし」


 白柏君が苦笑いをして言う。


 気づけば先程より周りは人で埋め尽くされており、みんなにが興味津々に私達の会話を聞いている状態だった。


 体育館までの廊下では、白柏君と紅葉が前を歩き、私と富谷君は必然的に後ろで並んで歩いていた。


 前ではきゃっきゃきゃっきゃと楽しそうに話すカップル。

 後ろでは会話すら交わさない二人。


 なんと不釣り合いな図だろうか。


「…………あの………さ」


「なに?」


 思いがけず富谷君が私に話しかけてきた。


 あくまで平然を装って…。


「明日って休みだよな」


「うん、試験休みだよ」


「一緒どっか行かないか?」


「…………え……?」


 ええええ??!

 うそ、うそ、うそ!!


「嫌だったら断れよ?」



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