勘違いしないで

第一話

「………しおね………汐音……………汐音…………!!!」


「…………へっ…!!?」


「んもう、聞いてなかったでしょ?」


「ああ、ごめん、考え事してた」


 というのも半分嘘で、最近、何も考えられずにぼーっとしてしまうことが多い。

 原因は分かっている。


「……ねぇ、なんかあったでしょ?」


 紅葉がこちらの目を見て神妙な面持ちで言ってくる。


 心臓がビクリと縮こまった。


「別に何もないよ…?ただちょっと眠いかな、って」


 顔には出ていないはずだ。


「…………本当?最近ぼーっとしてること多いから、結構心配なんだけど?」


「うそ、ごめん、最近勉強頑張ってるからかなぁ?睡眠不足なのかも」


「…………そう?なんにもないならいいんだけど。頑張りすぎないでよ?」


 咄嗟に嘘で誤魔化す。勉強を頑張っていないわけではないが、睡眠不足なのは本当だ。

 この原因も分かっている。


 でも紅葉を心配させる訳にはいかない。


「そうだね、そうする」


 そう微笑み返す。



 紅葉、ごめん、きっといつか話すから。今は、、




 ――今日は期末テスト当日だ。


 勉強している時って、勉強以外の余計なことばかり考えてしまう。

 体を動かさないからか、脳が余計なところまで働いてしまうらしい。


 私はこの期末テストまでの約二週間、色々考えた。


 私は本当に富谷君のことが好きなんだろうか。


 惹かれてるのは事実だ。それと、胸がなったのは嘘じゃない。

 だが、私が富谷君を好きだとして、それが許されるわけない。


 どうすればいいのだろう。


 富谷君と会わないよう心掛けて、忘れるか。いっそ、好きになるのを許すか。……………


 どれも無理だしダメに決まってる。

 自分で努力して吹っ切るしかないのだろう。


 私に新しい恋をする資格なんてないのだから、そうするしかない。


 結論を出す頃には、期末テストが間近に迫っていた。



 というわけで、今回のテストは悪い予感しかしない。


 確実にまずい。


 まあ、いつも割といい点数を取れているので、どれだけ酷くても留年することはないだろう。


 うん。


 私は自分の席に座り、少しの悪あがきとして、教科書の覚えきれていない単語を必死に頭の中へ詰め込む。


「おはよう汐音ぇ」


「おはよう紅葉、元気ないねぇ、どうしたの?」


「テストがやばいの~徹夜したの~」


 紅葉の顔にはとても生気がない。


「そんな悪あがきしてないで私と一緒に赤点取ろうよぉ」


「そういうこと言って、いっつも赤点取らないくせに」


「ふふっ、まあねぇ~?」


 お、急に元気がではじめたぞ?


「紅葉はやんなくて大丈夫なの?」


「んぅ、ちょっと寝る~、このままじゃテスト中に寝てしまう~」


「あら、そう、おやすみ」


「おやすみ~」


 そう言うと、紅葉は自分の席へ行き、突っ伏したと思ったらすぐに寝てしまった。


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