第二話
「ああ、ごめんね、邪魔しちゃって。続けてていいよ」
くそぉ、まだ扉に紐が引っかかっている。
外そうとするがなかなか外れない。
「な、なんでおま、ここにいんの!?」
「散歩してたらたまたまここに着いただけだよ、」
んん、外れない…どうなってんだこれ…
力任せに外そうとして、フェンスをガシャガシャ言わせる。
「おい、そんなことしたら余計食い込むだろ、ちょっとじっとしてろって」
「え、あ、うん」
富谷君はこっちへ駆け寄ってきて扉を開け、器用に紐を外してくれた。
「わ、ありがとう、助かった」
「いや、全然、大丈夫だけど、」
「じゃあ、邪魔してごめんね、続けてていいよ」
トートバッグを肩へと掛け直し、今度こそとベンチの方へ向かう。
「あ、おい!待てって!」
「ん、何?」
「あ、のさ、俺もそっち行っていいか?」
「ん?そっちって?」
「だからっ、一緒にベンチ座ってもいいか!って、こと!」
「んっと、いいけど…」
「ほんとか!?よしっ!」
なんでそんなこと聞いたんだろうか…、それに、最後の「よし」ってどういうこと?
私の手には、プルタブの開いた、缶入りのミルクティーが握られている。
隣には、富谷君が座っている。
缶はさっき、富谷君が自販機で買ってくれたものだ。
缶に口を付けて一口飲む。
おいしい。
「この間のチーズケーキありがとうな、すっげえ美味かった」
無言の時間が長かったせいで、いきなり話しかけれられ少し驚く。
でも、よかった、あれちゃんと食べてくれたんだ。
急いででも作った甲斐があった。
「長谷川、料理得意なのは知ってたけど、お菓子作りも得意なんだな」
「あれ、私の名前知ってたんだ、しかも料理好きってとこまで」
「これは多分、学校の奴ら皆知ってると思うぞ?」
「あ、そうなんだ」
知らなかった…人の噂ってすごい。
「そういえば、富谷君ってこの辺りに住んでるの?」
この小さな公園を知っているということは、これ以外に、めっちゃ公園マニアだとか、あとはバスケをする場所がここぐらいしかない、ということぐらいしか私には考えられない。
「そうそう。こっからゆっくり歩いても5分で着くぞ」
「そんなに近いんだ、じゃあ休みの日は毎日ここで練習してる感じ?」
「そうだな、暇さえあればここに来てる気はする」
本当にバスケが好きなんだんなぁ。
何か一つのことにこんなにも打ち込めるって素晴らしいことだと思う。
「長谷川は?家近いのか?」
「いや、ここから歩いて1時間くらいかなぁ?私もよくわかんないだけど」
「そんな遠いのか!?じゃあなんでここに」
「私知らない道歩いたりするの好きなんだー。だから今日も適当に歩いてたらここに着いてたの」
「………………なんかそれ、運命みたいだな………」
「……え?ごめん、なんて言った?」
小さい声で呟かれ、聞き取ることが出来なかった。
「あ、いや、なんでもない、独り言」
「そう?」
富谷君って独り言とか言うタイプなんだ。
いつも見ている限りは、そんな口が動くタイプでは無さそうと思っていたんだけど。
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