第六話
その日の下校は紅葉が駅まで一緒に付いてきてくれた。
白柏君とは、私が心配だからと約束を断ってきたらしい。
なんていい子。
「ねぇ、富谷君にお礼したいんだけど、何がいいと思う?」
流石にあれだけ迷惑掛けといて、飴ちゃん数粒じゃ酷いもんだろう……
「んー、そうだねぇ、あ、そういえば、富谷くん甘いもの結構好きらしいよ?手作りのお菓子とかー?!いいじゃん!?」
まーた悪い顔になってる……
「そっか、ありがと、参考にさせてもらうね」
「ふっふー、私のイケメン好きもたまには役に立つとしたもんだろ?」
「今回ばかりは否定出来ないね」
まさか紅葉のこの知識が役立つとは。
思いがけず、ってやつだ。
でももうこの時間だとお菓子屋さんは空いてないだろうしなぁ…
よし、スーパーで材料買ってくるか。
紅葉の思惑に嵌ることにはなるけど、まあしょうがない、お礼が先だ。
簡単に作れて割と日持ちする、甘いお菓子…
なるべくだったらケーキがいいなぁ…
ん、チーズケーキにするか。
チーズケーキだったら保冷剤沢山入れとけば朝から夕方くらいまでは問題ないだろう。
そうと決まったら、クリームチーズと、バターと、お砂糖は家にあるし、、、
「汐音、私のこと忘れてるでしょ」
「うあ!ご、ごめん、お礼考えてた」
「んもう、、汐音が元気ならいいけどさぁ」
「ごめんね、気をつける」
「嘘嘘、ほんとに汐音が元気ならいいんだよ、ほら、もう駅着いちゃったし」
「あ、ほんとだ、じゃあ今日はここでバイバイだね」
「うん、また明日ね、ちゃんとあったかくして寝るんだよ!」
「大丈夫!また明日ね」
そう言いながら手を振った。
ほんとにあの子はどこまでいい子なんだ……
嫁にしたい……
そう思いながら顔を両手で覆った。
翌朝、私は保冷バッグに保冷剤をこれでもかと詰め込んで、ラッピングしたチーズケーキとタッパーに入れたチーズケーキいくつかを入れて、リュックに入れて登校した。
あ、もちろん後者は私と紅葉の分ね。
昨日多めに作っておいたのだ。
乙女は甘いもの大好きだもの、チャンスさえあったらいくらでも食べたい。
ということでちゃっかり持ってきたのだ。
しかも今朝、気合いを入れて紅茶まで淹れてきてしまった。
おかげで鞄はずっしり重たい。
「紅葉~、おはよう~」
「わ、どしたの、そんな顔して」
「助けてぇ~」
う、重い……
私は半ば鞄を放り投げるようにして、机に置いた。
でも富谷君へのお礼も入ってるから、あくまで優しく。
「え、鞄すごい重そうよ?だいじょぶ?」
紅葉が心配そうにこっちを見てくる。
「大丈夫じゃなかった…私これで帰りも帰るのやだからちゃんと消費してねぇ?」
「ん?消費?ああ!"あれ''ね!そりゃあ頑張ったねぇ」
「お礼だから頑張らないと意味無いもの。多めに作っといたから、昼休み一緒食べよ?紅茶も淹れてきたんだ」
「ほんと!うれし~!」
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