第五話
ふぅ~。なかなか迷惑をかけてしまった。
いやしかし、とても長く眠っていたような気がする。
気分がやけに良い。具合もすっかり良くなっている。
ふ、っと外をみると、もう空は夕焼けに染まっていた。
え……
うそ。私あの中庭に出たのって昼前だったはず……。
じゃあ、あれからずっと側にいたってこと?
自分が思っていたより迷惑かけてた……。
どうしようか……もっとちゃんとお礼をすべきでは……?
でも放課後バスケでもしてない限り会う機会なんてそうそ――
「………しおねー……」
ん、なんか聞こえる。
「……しおねー!……」
これ、紅葉の声?
廊下からだ。
ガラッ、という音がして扉の方を見ると、肩を激しく上下させる紅葉の姿。
「しーおーねーーー!!」
今にも泣きそうな声で私に向かって走ってきて、抱きつかれる。
「大丈夫!?まだ具合悪い?もっと寝てていいから!ね?」
んん…だいぶ心配させたようだ……。
「もう大丈夫だから!いっぱい寝たし!ね?」
「ほんと?」
「ほんと。」
「……よかったぁーー!!心配したよぉーー!」
「ごめんね、心配かけて。」
「そうだよぉーー!4限終わっても来ないから心配してたら、運ばれたって言うし、昼休み保健室来たら富谷くんいるし、、、、、
そう!富谷くん!なんでいたの?運んでもらったの!?
しかもちょっとなんかいい感じ~?の雰囲気~?だったしぃ~?邪魔しないように汐音の顔ちらっと見て帰って来ちゃったからさぁ~?」
紅葉、悪い顔になってるよ……
「う、うん、たまたま通り掛かったらしくて、なんか運んでもらっちゃったみたいでさぁ…ほんとごめんなさいって謝っといた」
「ふぅーん?本当はわざわざ助けに来てたりしてねぇ~?」
「いやいやそれはない!だって倒れたの中庭の植木の影だよ?分かる訳ないじゃん?」
「まあそっかなあ?」
紅葉は妙に納得しない様子で頷く。
「でもまあ、取り敢えずなんともないみたいでよかったぁ。運ばれたって聞いた時はほんとにどうしようかと思ったもん」
「ごめんごめん、やっぱ授業置いてかれるの嫌で。体調悪いの分かってたんだけどさ…」
「そんなの、倒れたりしたら元も子もないじゃん!汐音すぐ無理するんだから…」
「ほんとごめんって!これから気をつけるから!ね?」
「本当だね?ちゃんと気をつけてよー?」
「わかってる、紅葉も心配するしね」
「うん、それでよし。ノートならちゃんと私が取っておいてあげるしさ、ポイントも教えてあげるから」
「ふふ、紅葉がとるノートなら心配ないね」
「そうだよ、私に任しときなよぉ!いつでも頼りなって!」
「ありがと、頼りにしてる」
「うんうん、頼っときな頼っときな」
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