君といれたら

第一話

「ねーねー、昨日どうだったの?」


 紅葉の席に行き、問いかける。


 私達以外にも、学校は美男美女カップルができたという噂で持ち切りだ。


「べ、別に、普通に帰っただけだよ?」


「だーかーらー!その"普通"がどうだったかって話!」


「普通に連絡先交換して、お話して、駅まで送ってもらって、って感じ…?」


「ちぇっ、そんなもんかぁ」


「何よ"そんなもん"って!こっちだって必死だったんだからね!まままさかOK貰えてその流れで一緒に帰るとか予想してないし、連絡先まで貰えてさ…!それだけで精一杯だったんだから!」


 うーん、まあ紅葉にしちゃあ頑張ったってところだけど…


「今後に期待ってとこね」


「んもう!!」


 紅葉は怒っているのか拗ねているのか分からないような顔をする。


 そんな紅葉も可愛くて、つい微笑ましくなってしまう。


「汐音何笑ってんの!?からかうんならさっさと自分の席に戻りなさいだよ!?」


「違うよ、紅葉可愛いなぁと思ってさぁ?」


 紅葉がみるみる口をへの字にしていく。


 わお、どうやら紅葉、怒ってしまったみたいだ。


「ほーらやっぱりからかってる!そんな意地悪さんは早く席に着いてください?ほらほらほら!」


 紅葉が強引に私に席を立たせ、背中を押して私の席まで連れていき、座らせる。


 紅葉はそのままズカズカと席に戻り、ドスンと音が聞こえるくらい勢いよく席についた。


 ………ありゃあ相当拗ねてるわ。


 ちょっとからかいすぎた感もあるけど、紅葉は幸せそうで、とても安心してしまった。


 紅葉はモテるんだから自信もっていいのに、といつも思うけれど、やっぱりそういう訳にはいかないよな、と考え直して思う。


 親友には幸せになってほしいから、ずっと全力で応援すると誓う。



 紅葉には、私のようになってほしくはないのだ。

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