第四話
「そんな驚くことないでしょうが!?」
「だって騒ぎ方がアイドルに向けるような感じだったじゃん?!紅葉いっつもそうだったし...」
「うーん、それは否めないけども、別にそういう騒ぎ方したら恋愛対象じゃないなんて誰が言ったと?」
「誰も言ってない、です、」
でも私がそう思ったのは、騒ぎ方の所為だけじゃなくって、
「それに、紅葉全然アタックするような素振り見せてなかったから」
もしかして私が知らないだけかもしれない。
''全然"というのは言わないでおくべきだったか。
「……だ…だって恥ずかしいしぃ…」
ほんのささやかな沈黙の後、紅葉が珍しく俯き加減に口を尖らせながら言った。
「んっと、紅葉ちゃん??それは照れてるね??ね?ね?」
「うーるーさーいーー!!」
紅葉が片手で私の背中をペシペシと叩く。
「わかったわかった、ごめんね拗ねないで?」
「……うぅ……特別許す。」
そっぽを向きながらボソボソと聞こえた。
もし紅葉に好きな人がいたならば、絶対アタックすると思ってはいたけど、思い返してみれば紅葉に好きな人がいるとは一度も聞いたことは無かった。
紅葉って、見かけによらずそういうの疎かったのか。
なんか少し安心したな。
紅葉はもうとてつもなくモテモテであるからに、男を払うのには馴れているであろう。
ただ男に、好きな人には自分から向かえないタイプだ。
かわいい。
「じゃ、ここは私の出番ですかね!!」
「え、何汐音、何する気!!?」
「白柏君を紅葉の彼氏にしてあげる!!」
自分でも、それがお節介で気合いが入りすぎているのも分かっている。
でも、紅葉このままじゃ何もしないままだよね。
「そんなお節介、いいのに、、。あと別に付き合いたいとか、、思ってないし、、、。
それと、どうやって?」
「それは勿論、紅葉が告白するしかないでしょ?
それで、私が手助けしてあげる。」
「そんなのいいって!!」
「じゃあずっとこのまま??来年3年生になって忙しくなって会えることも少なくなるかもしれないよ?そんなことしてる間に卒業だよ?いいの?紅葉はそれで」
口が勝手にベラベラと言葉を並べていった。
でもそれは嘘の気持ちでも何でもなくて、本心だ。紅葉には絶対に幸せになって欲しい。
「わかってるもん……そんなの……」
また俯き、口を尖らせて言った。
だが、今度は頭を上げる気配がない。
………しまったな。
「ごめんね、言い過ぎた。
……ちょっとおいで?紅葉」
言葉と同時に、私は両腕を紅葉の前に広げた。
少しだけ優しくしたことで、俯きかけたその顔は私の方を向いたが、まだ捩れた感情はその顔に残っている。
それでも黒い影は私の方へと近づいて、ふわりとした綺麗な黒髪は、私の頬に擦れた。
私は腕を紅葉の頭へと伸ばして、指で優しく梳いた。
「あのね、紅葉の言うことはすごくよく分かる。でもね、前向かなきゃ人間変われやしないの。やって後悔よりやらなかった方が何倍も後悔すんの。例え当たってヒビ入っても何かが、誰かが、絶対固めてくれる。その方が強くなるの。」
これは押し付けだ。紅葉への勝手な私の押し付け。
人生に失敗した自分を慰めるために、子供を躾ける親のように。
紅葉が何度も、分かったと言うようにコクコクと頷く。
その度、サラサラした髪が私の肌に当たった。
――スス……
もう一度髪を梳いた。
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