これが唯一の手段
第一話
放課後、制服バスケを見に行ったあの日から既に1週間。
あの日から頻繁に富谷遥樹がバスケをするという噂を聞くようになった。
それに何時もあの日と同じメンバーで、だと言う。
しかもほぼ毎日。
お陰でここ一週間は、毎日紅葉に放課後体育館に連れ回されてばかりだ。
自分一人で行くと最前列を取れないから、らしい。
まあ、親友の頼みを断るほど時間に困っていない。
でも何が嫌かって、私が通る度、人が周りに避けてわざわざ道を作っていくことだ。
それを紅葉に相談すれば、「え、汐音気づいてなかったの?!いつものことじゃん!?いーい!そーゆーとこ鈍感って言うのー!」少し拗ねた様子で答えてくれた。
それを鈍感と言うのか、、。
「しーおね!!行っくよー!」
「あーはいはい、ちょっと待ってね」
流石に一週間ともなれば、この会話だけで体育館に行くことだと分かる。
急いでバッグに物を詰め、肩に掛けた。
「できたー?」
「うん、行こっか」
そう言うと、紅葉はニンマリと口角を上げて、嬉しそうに微笑みながら、手指を絡めてくる。
これも毎度のことだ。
バスケを見に行くだけで紅葉の笑顔と恋人つなぎが付いてくるなんて。
付き添いなどお安い御用だ。
体育館に着くと、また入り口に溜まる女子達が急に静寂を決めこんで、端に避けていく。
これは一週間経てども慣れない。
一生経っても慣れなさそうな予感。
それでも紅葉はそこに出来た道を嬉しそうにずんずん進んで行くので、私はそれに付いていくしかない。
でも、一週間経って分かったこともある。
それは、富谷遥樹は私でも分かるほどかなりイケメンだということ。
初めてバスケを見に体育館に来た時、富谷遥樹の顔を見ることはできなかった。
2日目は何故かあからさまにこちらを見ようとせず、初日と同様、顔を見ることはできなかった。
次の日、紅葉に誘われて体育館へ行けば一向に富谷遥樹が来る気配がせず、紅葉の強請りで40分は粘ったものの、それ以降は流石に諦めた。
4日目、前日バスケをしなかったことで、もうやらないと踏んだ女子が多かったからか、見物客もそれほど多くはなかった。
それにもう一つ、おかしかったことは、今までに無いほど富谷遥樹がこちらを見てくるのだ。ちらちらと少し顔を伏せながら。
その顔は、流石騒がれるほどに顔が整っていて、そういうのに疎い私でさえ、騒がれる理由は分かった。
しかもスポーツ万能と来た(富谷遥樹がバスケをしているところしか知らないが、見たところ足も速いし身のこなしも軽い)。
人気になるのには充分すぎるだろう。
しかし、あの白柏朔とかいう男子もなかなかの顔立ちだったことに気づいた。
紅葉好みの顔だ。
しかも富谷遥樹と仲がいい。
見たところ、富谷遥樹はなぜかわからないが、からかわれているようで、それでも楽しそうにバスケをしていた。
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