完全に1人で遊ぶ場合

 TRPGを自分1人だけで遊ぶ場合、シナリオの全貌を知ってしまっていることが障害になると思われているのではないだろうか。

 確かに、自分がプレイヤーとして、白々しく知らないフリをしているのは、茶番丸出しで面白くない。


 そういうことならば、自分はGMとなり、何も知らないプレイヤーを創作してしまえば良い。意味不明なことを言っていると思うだろうか?

 言い方を変えれば、シナリオの知識以外の判断基準で行動を決断するプレイヤーを創作するのだ。

 例えば、左右に分岐する道があり、左に宝箱があるとする。シナリオの知識で判断するなら、左以外の選択はありえない。

 しかし「自分の幸運はいつも右で掴み取ってきたから」という判断基準で行動しているプレイヤーは、右を選ぶはずだ。

 生粋のゲーマーで、全マップを探索しないと気が済まないというプレイヤーは、警告しても罠部屋のイベント見たさや宝物欲しさに踏み込んでいくだろう。そこに、効率を重視するプレイヤーがいたら、プレイヤー同士のやりとりが始まるはずだ。

「そんな危ないところに入っていたら、ボスと戦う前に物資が尽きてしまいますよ」

「いやいや、こういう危ないところには良い物があるんだって!」

 という具合に。

 こうした問いかけに答えを用意するのは、シナリオの知識ではなく、「このプレイヤーの信念は何を選ぶか?」という判断だ。

 このような、プレイヤーに設定した判断基準による選択であれば、シナリオの正解に合わせて判断基準を調整したとしても、案外白々しくないものだ。

 それに、その場は正解が選べても、その信念が常に正解に導いてくれるとは限らない。もし、正解に合わせて信念を曲げるとすれば、曲げるに相応しい理由付けが必要になる。すると「こういう理由、状況で信念を曲げた」という設定が新たに付く。

 これをあんまり二転三転させると、シナリオの前にプレイヤーの人格が破綻するだろう。

 信念によってプレイヤーの一貫性を保持するという縛りを設けることで、最適解だけ選んでハイ終了という白々しい展開を避け、ドラマチックなプレイ体験が実現できるというわけだ。


 ダブルクロス The 3rd Editionの場合、そのプレイヤーは、

 どのシンドロームが、どうして好きなのか。

 トレーラーとハンドアウトを見て、何を思うのか。

 クイックスタートを使うのか、コンストラクションを行うのか、あるいはクイックスタートに軽くアレンジを入れるのか。

 コンストラクションを行うとすれば、性能を重視して演出を妥協するのか、演出の方を大事にして性能を妥協するのか、「経験点が入ったら払います」と言って演出だけ先行させるのか、あるいは未完成であることを「封印されている」というような設定に組み込むのか。

 クイックスタートにアレンジを入れようと思った理由は何か。

 名前やライフパスを自分で選ぶのか、ダイスの出目に任せて、そこから物語を読み取るのか。

 自分のキャラクターを使う時、ノリノリなのか、恥じらいを見せるのか。

 NPC達に対してどのような感情を抱くのか。

 これらのように、プレイヤーの信念に関わる要素はたくさんある。GMを演じながら、プレイヤーの信念を形作っていくうちに、そこから繋がって細かい部分も埋まっていくだろう。

 本書のリプレイセクションは、これの実践例でもある。


 まずはプレイヤー1人で遊んでみると良いだろう。

 それが終わったら、プレイヤーの設定を変えて、同じシナリオを繰り返し遊ぶのもオススメである。

 そうしてプレイヤーの設定が増えてきたら、気に入ったプレイヤーの設定を2つ使って、2人のプレイヤーを相手に遊んでみよう。

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