その二十二 日記 七月十二日
今日は気になった事だけ書いておこう。
真仁くんの靴箱に手紙が入っていた。この時代に靴箱に手紙かぁ、なんてベタなんだろう。昔の小説やドラマではよくあるシチュエーション、こういう場合ラブレターと相場が決まってる。
手紙の主はどんな人だろう。きっとロマンチックで繊細な人なんだろう。
親友が初めてもらったラブレター。真仁くんが『初めてもらった』と小さな声で
手紙の内容は御礼の手紙だったって、それは古典的シチュエーションだよね。直接御礼をしたいと言って告白するんだ、きっと。
うん、きっとわたしより人の気持ちが判る人に違いない。いつまでも好きと言う気持ちが実感できなくて、真仁くんに気持ちを返せないわたしなんかよりずっと、彼の気持ちに応える事ができる人に違いないと思う。
恋する気持ちってどんなだろう。本で読んで想像してもピンと来ない。わたしには何か欠けているのだろうか。誰かを想ってドキドキしたり切ない気持ちになるって憧れなくもないけど、そのために自分を失うって言うのもなんか違う気がする。
いいえ、本当は恋と人生って両立できる筈なんだ。でもわたしは自信ない。きっとわたしは自分の都合を優先する。そんなわたしに付き合ってもらうなんて、わがまま聞いてくれる人はいないと思う。だから真仁くんに気持ちを返せない。
彼には幸せになって欲しい。
そうだよ、応援するくらいならわたしにもできるんじゃないかな。だから、メッセージで素直に応援するって書いたら、返事がなくなった。
真仁くんを応援するつもりだったのに怒らせてしまったみたい。どうして?
でも、何でこんなに気になるんだろう…… こんなに親しくなれた友達は始めてだから……?
真仁くんには全く関係ないことだけど、もうひとつ気になる事がある。
お母さんが『夏休みは予定空けといて』って言っていた。その説明はまだない。
予定のことも、
初めてかも知れない……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます