46話 体育座りで白くなる

  


 お土産売り場から2人が部屋に戻ると都合良く零と他2人がくつろいでいた

 ネムが部屋に入ってきた2人を見てまた眠り出し

 金色力は口の中でコロコロと飴を転がしてニコニコとしている

 零はいつもとは違った可愛らしい服を着ているのに雰囲気はどこか大人と表現するのがいいのだろうか、落ち着いた空気をまとい片膝を曲げもう片方の足は伸ばし床に座って壁に背を預けている右手には古書をもち左手でネムの頭をゆっくりと撫でる。その格好が普段のスーツならきっと名匠が黙ってはいないだろうと素人目に見ても分かるこの場所は完成された芸術と表現するのがいいのかもしれないとはいってきた2人は思う

 しかし話しかけないことには買ってきた物、ひいては勝負がつかないというものだ。意を決して話しかける


「零さん、ちょっといいかしら?」


 アリスが零に話しかける、手には先ほど買ってきたモノがはいった袋が握られている

 アリスの声に反応して零は読んでいた本をパンと閉じアリスの方を向く、そしてネムを撫でていた手を床につき立ち上がる


「大丈夫だ、よ。うん、大丈夫だ。」


 零の反応が少しおかしいがそんなことはどうでもいいのだとばかりに2人は早速例の物を零に渡す


「零、その。これ、プレゼントです。良かったらかわいがって下さいなのです」


『零のことを思って選んだんだぜ!味わってくれよな!』


 森アカネは「大きなご当地ぬいぐるみ」をアリス・リデルは「お菓子」を零に手渡す

 零は首をかしげながら受け取る


「??」


「……スンスン、スンスン。ンッ!!!おかし!!!」


 零が軽く握ったビニール袋をスンスンと鼻をきかせたハイエナ(金色力)が奪い去る


『あっ、零へのプレゼントが!』


 金色力はすぐさまビニール袋からお菓子の箱を取り出し乱雑に包装紙を破ってお菓子と対面する中に入っているのは零が食べやすいように「水ようかん」をアリス・リデルは選んでいた。故にその食べやすさから金色力の暴挙を止めるための時間は思考が追いつかなかったアリス・リデルには無かったのだ

 

『あ、…………』


 アリス・リデル撃沈。その場に体育座りになり灰になるかのように燃え尽きている「負けた」と小さく呟くのだった


 一方、森アカネはその出来事を見て安心がまず心にやってきた。お菓子を選べばきっとさっきの二の前になっていただろうがこの大きなぬいぐるみは食用では無いのだ。ヤツ(金色力)に奪われるはずが無いのだ。そう安堵していた


「む。零、それいい枕になりそうなの……貸してなの」


 伏兵がいた。眠りに対するスペシャリストであり眠りを妨げるモノには鬼に代わりお仕置きを実行する「ネム」だ

 ネムは零の持つぬいぐるみのはいったぱんぱんのビニール袋を凝視する

 手を伸ばし子供がよく親に向かって「それ、ちょうだい」としているときなんかに見られる光景だ


「ん、いいぞ。はい」


 零はなんの躊躇も無くぬいぐるみのはいったビニール袋をネムに渡す

 ネムはぬいぐるみを取り出すと早速枕代わりにしだす、そしてすぐさま眠りにつく

 森アカネは見逃さなかった、ネムが眠った瞬間その方を伝ってよだれがぬいぐるみについてしまったことを。

 そしてできあがる二つ目の灰


 この光景を他の誰かが見たのならきっとこう言うだろう「何があった」と。


・・・・・・・・・


 零の気に入るモノプレゼント選手権結果、勝者なし!


 あっ、零への誕生日プレゼントは別にありますので安心して下さい


 眠いのでこの辺で。また会いましょうおやすみぃ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る