幕間 とあるメイドのバーチャル活動

  


 時刻は午後1時、お昼時を少し過ぎたあたりの配信サイトで数ある配信のうちの1つ


「皆様こんにちは、本日もお集まりいただきありがとうございます。本日は皆様とお花について談笑したいと思い配信スタートさせていただきました」


 この配信者は今はやりのVTuberと言うモノだ

 画面にはシックなメイド服を身にまとった少女がどこかの庭を背景に語り出している。

 配信画面には他にロゴ化された「メイド」と書かれている


「このようなお花を皆様はご存じでしょうか?」


「メイド」は画面に写真を写す。白い花弁を咲かした綺麗な花


「この花は百合という花で。私が住み込みで働かせていただいているお屋敷に、つい先日花が咲いたのです。とてもいい香りでついついお嬢様のお出迎えを忘れ香りのする方に足を向けてしまうのは人間の性だと私は思うのです。私は悪くないのです。はい、絶対に」


・百合の花だぁ

・メイドとお嬢様……百合の花

・あっ

・悪びれる気が無いメイド発見


「そうそうこの前、百合の花が咲いたときに私百合の花について書庫で調べたのですよ。花言葉は純粋・無垢・純潔・威厳というものでした。いいですね、高潔で清廉なお嬢様にお似合いな花だと思います、庭師さんもよく管理してくれていて綺麗に育っているのでお嬢様によりいっそうお似合いな花です」


・電子で調べてたら……

・お嬢様って聞くと金髪ドリルがイメージに出てくる…

・庭師さんも頑張っとる

・綺麗な花が似合うお嬢様、うんいけるな!


 画面を覗くようにコメントを確認する「メイド」

 いわゆるガチ恋距離というモノなのだがこの「メイド」は全く気にしない、なぜならば分かっていないから!


・ガチ恋距離助かる

・ガチ恋してもいいってコトですよね!

・落ち着け、メイドさんはお嬢様と百合の花を咲かせているんだぞ

・おいおいおい

・タヒんだわアイツ


「がちこいきょり?なんでしょうかこの距離というのは?それと私とお嬢様では無く庭師さんが育てているのですよ」


 世情の話題に疎い「メイド」であった。



 ・


 ・


 ・


「……そろそろお時間ですね。お嬢様のお出迎えの時間なので今日はこのへんでお別れとしましょう(ペコリ)」


・またねー

・おつかれー

・ごきげんよー

・次も楽しみにしてる!


・・・・・・・・・


「メイド」は配信をきると部屋の外に出てお嬢様の出迎えに行く

 この「メイド」本物の「メイド」である、配信者のほとんどが設定という側を着ているのに対しこの「メイド」は本物の「メイド」なのだ


「本日は体育の授業が無かったと思うので体力が残ってらっしゃる、か」


「メイド」は玄関に待機する、その扉がひらかれるその瞬間まで


「(ガチャン)」


 扉の開く音がして「メイド」は頭を下げる。


「お帰りなさいませ、お嬢様」





 1用の病室には1人の少女がベッドに寝ている

 少女はベッド横にある窓から外を見る


「……目が覚めて1年ですか。どうやら私には私を心配する人がいないようですね」


 少女の呟きは部屋の外にまで漏れていた


「心配する人はいるんだが、来ることができないんだ」


 少女が声の方を向くとそこには目が覚めてから月1でやってくる老年の男性がいた。

 男性は老けてはいるが姿勢は良く格好もキチリしている


「毎回そう言いますがその理由は語りませんよね」


「すまない、それを言うことはできないんだ………。」


 男性は悲しげな顔をする


「そうですか、まぁいいでしょう。それで、今日はどのようなよで来られたのですか?」


 少女がそう問うと男性はパッと顔を上げる


「そうだね。今日は君にいい報告があってだね――さん来てくれないか」


 男性は誰かを呼ぶ。扉の方を見るとスーツを身にまとった白髪の少女が歩いてくる


 白髪の少女はベッドに近づいて少女に礼をとる


「彼女は私の友人のつてで知った方なんだが、まぁなんというかあれだ。君の病気が治すことができるかたらしい」


 なんとも歯切れの悪い言い方をする男性

 少女は男性の紹介してきた白髪の少女に懐疑的な目線を送る

 

「なんだか怪しいですね、期待するだけ無駄だと思いますが。イッタイどうやって治してくれるんですか?お医者さんでも治せないって聞きましたけど」


 少女の病気はすでに末期を迎えている、癌だ

 一般的に喋れているのがおかしいと思われるほどに病気が進行しているのだが精神面が安定している。死への恐怖や生への未練が全く見れないそう皆が判断してきた


「君は魔術というモノを知っているだろうか?」


 白髪の少女は唐突にそう問いかける

 

「魔術?おとぎ話とかで聞くようなヤツです?」


 白髪の少女は1つ頷く


「まぁそんなものだろう。私はそれが使える、それも高位の魔術が使える故に君の身体に巣くうモノ全て解決してやろう」


 少女はなにを言っているのか分からなかった。

 少女は知っていたのだ、自分が後残りわずかの命でありもう外に出歩くことができないことが

 しかし状況が変わった。

 あの白髪の少女が来たあの瞬間から私の身体は幾重にも鎖で拘束された身体から解き放たれたかのように軽くなった

 精密検査を受けて衝撃が走った

 身体は全快していたのだ

 涙はこぼれなかった、まるでまだ夢の中にいるかのような感覚で目が覚めたらまたベッドに横たわる生活が続くのだろうかと思えてしまうのだ 

 1年前からずっと心の底であこがれていた外

 記憶は無いが外を駆け回りたい欲求はあった

 あの日から1週間、診断やらリハビリなどをうけようやく退院した

 私の保護者として老年の男性が付き添っていた


「君の保護者だ、よろしく。今の君に衣食住を提供する者だと思ってくれ」


 男性はそう言うと少女と黒塗りの車に乗り邸宅へと向かう


「そういえばきちんとした挨拶はまだだったね、私は――という会社の一番上に立つ者だ経済面では苦労しないことは約束しよう」



・・・・・・・・・


休暇中に書いた作品です。

この話にでてきた白髪の少女はいったい誰なんだ!?

まぁお察しだと思うので明言はしなくてもいいでしょう


本作の改稿?作業したいのでもう少しお休み下さい。

 

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