第8話   犬も歩けばなんとやら 路地裏Stray dogs 1

冷たい風が吹いた


俺の体を撫でてどっかへ行く風


その冷たさに目が覚めて


見上げた空は


細くて狭い、それでいてどうしたって届かない


人間の言葉、似たような言葉を思い出す


「井の中のかわず


かわいそうなかえるの見た空


今見ているはまさしくそうなのだろう―――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[おい]


誰かに声を掛けられる、太く重い声色


[おい・・・クロ!]


名前を呼ばれてようやく目が覚める


目の前には体中の皮膚がダルンダルンの犬がいた


[んん・・・なんだよブル・・・]


俺はゴミ山のベッドでカチカチに固くなった体を伸ばしながら返事をした


ブル、見たまんまブルドッグなのでそう呼ばれている犬が返す


[じいさんのとこにメシ分けてもらいに行こうや、もう昼だぜ。]


じいさん・・・俺たちが住んでいるこの汚ねえゴミ溜めの路地裏、奥に抜けた先の公園に住み着いたホームレスのじいさんだ


俺たちに食えそうなモノを分けてくれる素晴らしい人間だ


俺たちは敬意を込めて、人間の会話から学んだ英語でこう呼んでいる


『スカベンジャー』と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る