第7話   籠の中のなんとやら 7

当たり前のように過ぎて行く日常


今日も周りを見渡せば、私より小さい犬達がわらわらと。


部屋の真ん中では二匹の犬がじゃれ合うようにどっちが強いかを競い


隅っこでは何匹かで集まり団子になってお昼寝


食事の時間はとうに終えたというのに、食い意地の張った犬は皿を舐めている


そんな犬達をよそに黒い猫は高いところで尻尾をゆらゆらと。


静かな日々、眺めていると胸のあたりが暖かくなってくる。


そんな時だった、いつもの人間が部屋に入ってきた


手にはカバーの掛かった金キラキラの籠のようなものを持っている


窓際の人間の腰ほどの高さの棚の上に乗せるとどこかへ行ってしまった


私はそれが気になってしまい近くの椅子を棚に寄せ、一つ二つと飛び跳ねて棚に乗った


カバーの向こうから『カサカサ』や『カチカチ』と音が聞こえる


匂いは・・・すんすん、おがくずのような匂いがした


カバーに前足を掛けるとカバーは‘‘するり‘‘と外れ中には


一羽の「小鳥」がいた―――


私を見ても身じろぎ一つせず、じっと私を見ている


この子とも仲良くできるかな?そう思い私は前足で籠を撫でてみた


すると・・・カチン、と何かが外れる音がして


籠の扉がゆっくりと開いてしまった。


小鳥はここぞとばかりに籠を飛び出し、開いていた窓から外へと飛んで行ってしまった


あぁ!待って!行かないで!


小鳥に向かい吠えたところで戻ってくることは無かった


そこに、水の入った小さな容器を持って人間が入ってきた


どうしよう・・・怒られるかも・・・


前足で頭を隠すように体を小さく丸める


「おや?あの子は行ってしまったのかい?」


「そっか・・・『よかった』。」


あれ?怒られない?どうして?


「あの小鳥はね、ケガをしていたんだ。それで私が保護してたんだよ。」


「そろそろ頃合いかなって思ってたんだけど、治ったんだね、よかった。」


「ほら、窓の向こうをご覧。」


言われて窓の外を見る


高いところ、猫が跳んでも届かないくらい高いところには二羽の小鳥がいた


一羽はさっきの小鳥、もう一羽は知らない小鳥


「ずっと待ってたんだね。」


二羽は少しじゃれるとすぐにどこかへと飛んで行ってしまった。


眺めていると不意に人間が私の頭を撫でて言った。


「君たちのことを同じように待っている人がきっといるよ。そしてその出会いはきっと『特別』なことだ。」


前にも聞いた『特別』という言葉、『特別』って実はたくさんの意味があるのかな?


撫でられた頭をぶるぶると振るわせる


そして私はもう一度窓の外を見た


どこまでも続く光でいっぱいの世界


この先に、私を待っている人がホントにいるのかな?





                    籠の中の『鳥』—―完—―

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