カウントダウンが始まった
「 」
「客?」
「 」
「これから寝るような時間に客?非常識な客だな」
「 」
「ほう……そういう事か。シュレーゼント王国の連中は随分とお前を舐めているようだな。警護のものを下げるとなるとシュレーゼント王国が関与しているというわけだな」
「 」
「随分とお前の実力を過小評価してるんだな。この期に及んで
「 」
ヴェルティアとの会話はそこで止まる。どうやらシュレーゼント王国の腕試しとやらが始まるらしい。
「馬鹿な連中だ。まぁディアーネさんとユリさんがいるから
シルヴィスはそう小さく呟いた。ヴェルティアの言う腕試しが何を意味するか当然理解している。ヴェルティア達をもてあました、もしくは目障りになった連中がヴェルティア達を殺そうとしているのだろう。まともな方法では絶対に不可能なので暗殺者を雇ったとかそういうことであろうとシルヴィスは目星を付けている。
「しかし……あの連中はどこまでも舐めてくれるな」
シルヴィスは嫌悪感を過分に含んだ声で言うと立ち上がると自失を出て歩き始めた。。シャリアスに先程のヴェルティアとの会話を伝えるためである。
しばらく歩いてシャリアスの執務室の前の騎士達に要件を伝えると入室の許可を待つ。
程なくして騎士がシルヴィスに一礼して扉を開けた。騎士に礼をいいシルヴィスが入室するとシャリアスが執務を中断してシルヴィスを出迎えた。
「執務中に失礼します」
シルヴィスはそう言うと深々と頭を下げた。
「構わないよ。それでシルヴィス君、何があったのかね?」
「どうやらヴェルティアに暗殺者が放たれたようです」
「ほう……」
シルヴィスの報告を受けてシャリアスから放たれる気配の危険度が数段上がった。その気配を発してた木々で羽を休めていた鳥たちが一斉に羽ばたいたのが遠くで聞こえる。
「シュレーゼント王国の連中……もう皆殺しにしてよいですかね?」
シルヴィスの言葉にシャリアスは首を
シャリアスは当然シュレーゼント王国を滅ぼし、王族を
シルヴィス一人送り込んでシュレーゼント王国や教団を滅ぼすことは容易であるが、それではテロリストでしかなくなる。今回の件はシュレーゼント言う国と教団が神と共謀して、アインゼス竜皇国の皇女を誘拐するという宣戦布告を行った以上、正々堂々とシュレーゼント王国を断罪しなければならないのである。
「失礼しました。ついはやる気持ちのために考え無しの事を申し上げました」
「いや、シルヴィス君の気持ちはわかる。というよりも私も同じ気持ちだよ。誘拐し自分達が目障りだという理由で殺そうというのは随分と私の娘を玩具にしようとしてくれるじゃないか……とね」
シャリアスの声は一切の感情が込められていない。それが逆にシャリアスの怒りの深さ強大さを示していることをシルヴィスは知っている。
そこに通信が入る。
『お嬢は無事です。送り込まれた暗殺者はとらえて、お嬢の部下になりました』
ユリからの報告にシルヴィスとシャリアスは互いに視線を交わすと大きく頷いた。ヴェルティア達三人の実力の高さは疑いようのないものであるがそれでも戦いに絶対などありはしない。無事に事が終わってホッとしたというのが正直な感想なのだ。
「ひとまず安心ですね」
「ああ」
「でもシュレーゼントのクズ共の免責には一切関係ないですけどね」
「もちろんだ」
シルヴィスの言葉にシャリアスは即座に言う。
暗殺が失敗したことは暗殺者を送り込んだという罪の減刑には何の関係もないのである。
『今、ディアーネがオルガス達にでっかい釘を刺しに行きました。当然、王族の断罪はここでは行うつもりはないです。ディアーネもそれは理解していると思います』
ユリからの報告に二人はまたも頷いた。ディアーネもユリも今すぐにでもシュレーゼント王国の連中を撫で斬りにしてやりたいところであろうが、あくまでも断罪はアインゼス竜皇国の国家事業によるものでなければならないという意識があるのだ。
「今から楽しみだよ……あのクズ共に断末魔の叫びをあげさせるのがね」
「俺もです」
シルヴィスとシャリアスはそう言葉を交わしたところで再び遠くで鳥たちが一斉に羽ばたく音が響き渡った。
【あとがき】
シルヴィスとヴェルティアがどのような会話をしたのは『最強皇女を異世界に召喚したことでとんでもないことになった世界の話』の第8話『甘い考えは身を滅ぼす②』でわかります。そしてどのような方法でヴェルティアは暗殺者を退けたのか?そちらも楽しんでいただければと思います。
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