後日譚 第5話 シルヴィスの帰郷⑤
「しかし、お前……料理出来るのか?」
シルヴィスがヴェルティアへ尋ねるとヴェルティアが妙に自信たっぷりな表情を浮かべた。
「ふふふ〜シルヴィス、甘いですねぇ〜」
「は?」
「私ほどの出来る女ならば料理を作ることくらい朝飯前なのです!! もう朝食は済みませましたが!!」
「お前、あんまり残念なことを言うなよ」
「おおっ!! 私が何を作るか楽しみですか!? 楽しみですよね!! でももう少し待ってもらっていいですか!! ささっ、みなさんは家の中でゆっくりと過ごしてください!!」
ヴェルティアは得意満面な表情でシルヴィス達を家の中へ入るように勧めた。
あまりにも自信たっぷりな宣言にシルヴィスはゼイル達に視線を向けた。するとゼイル達は互いに頷く。
「そうか。それなら料理は任せたぞ。父ちゃん、母ちゃん、みんな家の中で待つことにしよう」
「そうか、それなら……みんなせっかくの申し出だ。お言葉に甘えるとしようじゃないか」
「そうね。楽しみだわ」
ゼイルとアルマの言葉にミリム達も頷くと家へと移動していく。
「あれ? シルヴィスは入らないんですか?」
「いや、お前……本当に大丈夫か?」
「ふふふ、心配ご無用です!! さぁ、積もる話もあるでしょうから、シルヴィスも家の中で待っていてくださいね」
ヴェルティアがそう言ってシルヴィスの背中を押すとシルヴィスはそのまま抵抗することなく動き出していった。
「ディアーネ!! ユリ!! さぁやりますよ!!」
「はい!!」
「任せてくれ、お嬢!!」
ヴェルティアの檄に忠実な二人が即答する。
それから、三人は料理に勤しむのであった。
・・・・・・・・
コンコン……
ヴェルティア達が料理を始めてから、三十分ほど経ったところで家の扉がたたかれた。
「は〜い」
ラディアが扉を開けるとディアーネが一礼した。
「皆様、お待たせいたしました。料理の準備が整いましたので、どうぞ」
ディアーネの表情は穏やかであり、それが料理の成功を予感させるものであった。
シルヴィス達は料理の出来栄えを楽しみに外に出ると、そこには巨大なテーブルと人数分の座席が用意されていた。
「ささっ!! みなさん、席についてください!!」
ヴェルティアが席をすすめると全員がそれぞれの席についた。
「さぁ、私の作った料理をご堪能ください!!」
ヴェルティアが空間に手を突っ込むとそこから次々とステーキを取り出すと、ディアーネとユリに手渡していく。手渡された二人はシルヴィス達の前へと焼けたステーキを置いていく。ジュウジュウと音をたて、香ばしい香りを放つステーキはいかにも美味しそうだった。
「お〜〜これは美味そうだ」
「ええ、これはすごいわ」
「すごいなヴェルティアさん」
「ええ、すごいです」
「うわぁ〜美味しそう!!」
ゼイル達はそれぞれの表情で出されたステーキに釘付けになっている。
「お前、料理できたんだな」
「当然です!! この私にかかれば料理なんて簡単なのです!!」
ヴェルティアは得意満面の笑みで高らかに言い放った。
「そうか。さすがはヴェルティアだな」
「そうでしょう!! そうでしょう!! いや〜シルヴィスに褒められるのは嬉しいものですねぇ〜」
「ああ、お前が俺や父ちゃん、母ちゃん達のために作ってくれたのが嬉しいよ」
「はっはっはっ!! 妻ですから!!」
シルヴィスの言葉にヴェルティアは誇らしげに腰に手を当てて高笑いした。
(一生懸命,練習してたものね)
(ああ、お嬢って『ステーキ!! とりあえず焼いてしまえば問題ないですよね!!』ってとりあえず最大火力で焼こうとしてたからなぁ)
(ええ……止めるのにとてつもなく苦労したわね)
(シルヴィス様の偉大さを再確認したよな……)
(そうね……)
ディアーネとユリは互いにそう囁いた。ヴェルティアの料理の練習に付き合っており、時折暴走しようとするヴェルティアを止めるのに非常に苦労したのだ。ちなみにヴェルティアが作れる料理はステーキだけである。
「ささっ!! 冷めないうちに食べてください!!」
ヴェルティアのすすめに従い全員がステーキを口に運ぶと、全員の顔が綻んだ。
「美味しい」
「ああ、焼き加減もバッチリだ」
「本当、美味しいです」
みなの舌鼓にヴェルティアは得意満面の笑みを浮かべた。
「はっはっはっ!! さぁ、遠慮しないでどんどん食べてください!!」
褒められればどこまでも喜ぶのがヴェルティアという人物である。それを短い時間であるがゼイル達は察した。
食事にヴェルティア達三人も加わり全員が楽しい時間を過ごした。
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