後日譚 第3話 シルヴィスの帰郷③
「母ちゃん……心配かけてごめんなさい」
「謝るのは私よ……ギオル……ごめんなさい。あなたが私たちを助けてくれたのに、それなのに……私は…私たちは親失格だわ」
シルヴィスとアルマの言葉にラディアは驚きの表情が浮かんだ。シルヴィスが自分の兄であることに気づいたのだ。
「お母さん、その人が……ギオルお兄ちゃんなの?」
ラディアがアルマにおずおずと尋ねる。
「そうよ。あなたのお兄さんよ」
アルマの言葉にシルヴィスは頷いた。
「初めまして、私はラディアって言います」
「初めましてじゃないさ。久しぶりだ。大きくなったな」
「はい」
シルヴィスの言葉にラディアはにっこりと笑った。
「ギオル、そちらの方達は?」
アルマがヴェルティア達を見て尋ねる。
「初めまして!! お義母様!! 私はシルヴィスの妻であるヴェルティアです!!」
「妻?……シルヴィス?」
「はい!! 結婚して一月です!!」
「あの……シルヴィスというのは?」
アルマの声にはやや不安が入っているようである。
「母ちゃん、俺は今、シルヴィスと名乗ってるんだ。お師匠様がくれた大切な名前なんだよ」
「……そう」
シルヴィスの言葉にアルマの表情が明らかに曇った。
「勘違いしないでほしい。俺はギオルという名前が嫌いというわけでじゃないんだ。シルヴィスという名前と同じくらい大切な名前なんだ」
「うん……わかったわ……ヴェルティアさん、ギオ……シルヴィスをお願いします」
アルマはそういうと深々と頭を下げた。
「任せてください!! シルヴィスは意外とうっかりさんですからねぇ〜このヴェルティアが妻としてしっかりと支えることをここに宣言!! しましょう!!」
「お前が言うな。お前の方がうっかりの数は遥かに多いだろうが!!」
「え? そうですか? この私がそんなミスをしてますかね?」
「し・て・る・だ・ろ・う・が!!」
「いひゃいです」
シルヴィスがヴェルティアの両頬をつまみ上げて言うと、ヴェルティアが抗議の声を上げた。
もちろん、シルヴィスは力など入れていないのでいつものじゃれ合いである。その証拠にディアーネとユリは全く動く気配はない。その様子を見て、アルマもラディアも少しだけ顔を綻ばせた。
「ラディア、お父さんとお兄ちゃんを呼んできて……シルヴィスが帰ってきたって」
「お〜シルヴィスのお父さんとお兄さんですか!!楽しみですねぇ〜!! それからお義母様!!」
「は、はい」
「お義母様はシルヴィスのことをギオルと言うなで呼んでもいいと思うんです!!」
「え……でも……」
「何を言ってるんですか!! お義母様にとってギオルと言う名こそ大切な名前です!! それなのに私がシルヴィスと読んだことは明らかに配慮不足でした。私のような完全無欠な者であっても、うっかりしてしまうこともあるんですねぇ〜うんうん!! しかし!! この私は間違えたままで終わらないんです!! 安心してください!! シルヴィス!! いいですか? いいですよね!!お義母様!!大丈夫だそうです!! はっはっはっ!!」
「ヴェルティアさん……ありがとう……ラディア、二人を呼んできて……
「うん!!」
アルマの言葉にラディアは元気よく答えると駆け出していった。
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